最近の注目審決・判決を紹介します。
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1 本願商標 |
本願商標は別掲(1)の通りの構成よりなり、第9類「救命用具」を指定商品として、平成21年5月1日に登録出願されたものである。
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2 引用商標 |
原査定において、本願商標が商標法4条1項11号に該当するとして、拒絶理由に引用した登録第4490199号商標(引用商標)は別掲(2)の通りの構成よりなり、平成5年1月7日登録出願、第12類「落下傘」を含む商品を指定商品として同13年7月13日に設定登録された後、取消審判により指定商品中「車いす」について登録を取消され、その確定審決の登録が同19年2月6日にされたものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は別掲(1)の通り、黒塗りにした方形状の輪郭内に白抜きで、太線を表してなる処、その構成は左方のS字状の書き始めの部分を右に延ばした図形と、右方のS字状の書き終わりの部分を真上に延ばして、輪郭の上の部分にまで達した図形とが、それらの延ばした部分において輪郭内の中央やや上側で十字に交差してなるものであり、直ちに特定の事物等を理解させるものとはいえない。 そうすると、本願商標は仮に「sts」の欧文字をモチーフにしたものと看取される場合があるとしても、全体が極めて図案化されているために如何なる欧文字を表現したものか、俄に判読し難いものであるから、これに接する取引者、需要者をして、特定の呼称観念を生じない、一種の図形よりなる商標と認識されるものというのが相当である。 してみれば、本願商標より「エスティーエス」の呼格を生ずるとした上で、本願商標と引用商標が呼称上類似するとして、本願商標を商標法4条1項11号に該当するとして拒絶した原査定は、取消を免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
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1 本願商標 |
本願商標は別掲(3)の通りの構成よりなり、第42類及び第45類に属する願書記載の役務を指定役務として、平成20年8月5日に登録出願されたものである。その後、第45類の役務に補正されている。
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2 原査定の拒絶の理由 |
原査定において、「本願商標は、スイスの時計メーカーである『オメガ社』が我国において本願商標の出願前より時計等に使用して著名な『Ω』の記号及び『OMEGA』の文字を書してなるから、これをその指定役務に使用するときは。取引者・需要者は前記会社若しくはこれと何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く役務の出所について混同を生ずる虞があるものと認める。従って、本願商標は商標法4条1項15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は、スイス国在の「オメガ エス アー」が商品「時計」について使用し、著名となっている「Ω」の記号及び「OMEGA」の文字よりなるとしても、「Ω」及び「OMEGA(オメガ)」は、我国においてギリシャ語の最終字母としてもよく知られているものであり、また、本願商標の指定役務「家相鑑定、風水鑑定、風水相談及びこれに関する情報の提供等」と商品「時計」とは、商品の製造・販売と役務の提供が全く別の事業者によって行われており、商品と役務の用途、商品の販売場所と役務の提供場所、需要者の範囲等を著しく異にするものである。 してみると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者・需要者が、引用商標を連想・想起するような事情はなく、昨今の企業における事業の多角経営化の進展を考慮しても、「オメガ エス アー」又は同人と経済的・組織的に何らかの開示を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について混同を生じさせる虞はない。 したがって、本願商標が商標法4条1項15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |