最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「FAO」は、経済産業大臣が指定する国際連合食糧農業機関を表示する標章「F.A.O.」と類似するから、商標法第4条第1項第3号に該当する、と判断された事例
(不服2010-7661、平成23年1月24日審決、審決公報第139号)
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1 本願商標 |
本願商標は「FAO」を標章文字で書してなり、第28類及び第35類に属する商品及び役務を指定して、平成20年11月25日に登録出願され、その後、商品及び役務については、補正されている。
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2 原査定の拒絶の理由 |
原査定において、「本願商標は国際連合の機関『食糧農業機関』を表示する標章であって、経済産業大臣が指定するものと類似するから、商標法4条1項3号に該当する。」旨認定判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は「FAO」の文字を標準文字で表してなる処、該文字は商標法4条1項3号の規定に基づき、経済産業大臣が「国際連合食糧農業機関の標章指定」(平成6年4月26日通商産業省告示第262号)として指定する標章である国際連合食糧農業機関を表示する「FAO」とは「.」の有無の差異を有するに過ぎず、その構成文字を同じするものである。 してみれば、本願標章は経済産業大臣が指定する標章と類似の商標といわざるを得ず、本願商標を商標法4条1項3号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当であって、取消すことはできない。 尚、請求人は請求の理由において、「本件商標は一個人の頭字からなるものであり、この個人名は前記機関の設立より83年も前に個人が有していたものである事実を考えると、斯る商標の使用と登録が一国際機関の権威を害するとするならば、不条理としか言いようがない。しかも、その使用分野は、食糧農業とは全く関係のない玩具の販売活動であって、商標法4条1項3号の趣旨に反するものではない。」旨述べている。 しかしながら、商標法4条1項3号はパリ条約第6条の3(1)(b)の規定の趣旨を受けて設けられたものであり、同条約の規定の目的とする処は、同盟国が加盟している政府間国際機関の紋章、旗章その他の記章、略称及び名称については、これと同一又は類似の標章を工業所有権の保護対象から除外することにより、当該機関の主権を尊重し、その権利と尊厳を維持・確保することにあり、前記法条の規定はこれと同趣旨をもって、一私人に独占させることにより当該国際機関等の尊厳性を害し、公益上登録することが妥当でない標章について定めたものである。 してみれば、本願商標と、指定された標章そのものとの類否を検討すれば足りるのであって、これについては、前記認定、判断の通りであるから、請求人の主張は採用することはできない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「日本秘湯の宿」は、定期刊行物に使用される商標として理解され、自他商品の識別機能を有する、と判断された事例 (不服2010-26971、平成23年6月9日審決、審決公報第139号)
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1 本願商標 |
本願商標は「日本秘湯の宿」の文字を標準文字で表してなり、第16類に属する商品を指定商品として、平成21年11月20日に登録出願され、その後、「日本の温泉に関する雑誌及び新聞」と補正されている。
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2 原査定の拒絶の理由 |
原査定において、「本願商標は『人にあまり知られていない日本の温泉の宿』の意を認識させる『日本秘湯の宿』の文字を普通に用いられる方法で書してなるから、指定商品中『人にあまり知られていない日本の温泉の宿に関する書籍』に使用するときは、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法3条1項3号に該当する。」旨認定、判新し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は指定商品について補正された結果、本願商標をその指定商品について使用するときは、定期刊行物に使用される商標として理解されるものであるから、自他商品の識別機能を果たし得る。 そうとすると、本願商標はその指定商品に係る商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とは言えない。 したがって、本願商標が商標法3条1項3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |