最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「」は、商品の種別や規格等を表示する記号、符号として取引上類型的に使用されているとはいえず、むしろ、請求人の業務に係る商品「ゴルフボール」等を表示するものとしてある程度知られているから、商標法3条1項5号に該当しない、と判断された事例
(不服2011-857、平成23年7月29日審決、審決公報第141号)
 
1 本願商標
 本願商標は上掲の通りの構成よりなり、第28類に属する商品を指定商品として、平成21年12月24日に登録出願され、その後、指定商品については、「ゴルフボ一ル,ゴルフクラブ」に補正されている。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は商品の記号、符号として容易に採択使用される欧文字『VG』と商品の規格、品番等の記号として普通に採択される数字『3』を『VG3』と結合してなり、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認める。従って、本願商標は商標法3条1項5号に該当する。」旨認定、判断して本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は上掲の通り「VG」の欧文字とその横に3分の2程の大きさの数字「3」を配してなる処、「V」と「G」の文字は「V」の文字の右側と「G」の文字の左側が一部結合されて、恰もモノグラムのように表された構成よりなり、また、数字「3」は小さく表され、全体として纏まり良く表示されており、かかる構成態様の文字及び数字が、商品の種別や規格等を表示する記号、符号として取引上類型的に使用されているとは言えない。
 さらに当審において職権にて調査するも、本願の指定商品に関する業界において、本願商標が商品の種別や規格等を表示するための記号、符号として普通一般に使用されている事実を発見することができず、むしろ、該商標は請求人がその指定商品について使用し、その種業界においてある程度知られているものである。
 してみれば、本願商標は極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とは言い難く、自他商品識別機能を十分に果すと認められる。
 従って、本願商標が商標法3条1項5号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B.  商標「江戸巻き」は、一体に表されている構成態様であって、例えば「伊達巻き,巻き寿司」以外の商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせる虞はない、と判断された事例
(不服2010-26242、平成23年7月4日審決、審決公報第141号)

 
1 本願商標
 本願商標は「江戸巻き」の文字を標章文字で書してなり、第29類及び第30類に属する商品を指定商品として、平成20年12月2日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標はその構成中に『巻物』を表すものと認められる『巻き』の文字を有してなるから、これを指定商品中、例えば『伊達巻き,巻き寿司』以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせる虞があるものと認める。従って、本願商標は商標法4条1項16号に該当する。」旨判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は上記1の通り「江戸巻き」の文字を、同書、同大、等問隔で纏り良く一体に表してなるものである。
 そして、本願商標はその構成中に「巻物」を表す「巻き」の文字を有するものの、当審において調査するも、「江戸巻き」と一体に表されている構成の本願商標にあって、これに接する取引者、需要者が、殊更その構成中「巻き」の文字部分のみを捉え、当該文字が商品の品質を表示したものと認識するというべき事情は発見できない。
 そうとすれば、本願商標はこれをその指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生ずる虞はないものといわなければならない。
 従って、本願商標が商標法4条1項16号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '12/4/25