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 商標「AMEDAS」は、気象庁の公益に関する事業であって営利を目的としない「アメダス(地域気象観測システム)」を表示する著名な標章「AMeDAS」と類似するから、商標法4条1項6号に該当する、と判断された事例
(不服2010-26515、平成23年7月25日審決、審決公報第142号)
 
1 本願商標
 本願商標は「AMEDAS」の欧文字を横書きしてなり、第1類「化学品」を指定商品として、平成21年10月16曰に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標『AMEDAS』は、気象庁が地域的に細かく気象観測する為、全国展開している事業、地域気象観測システムを表示する著名な標章『AMeDAS』と同一又は類似と認める。従って、本願商標は商標法4条1項6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1) 商標法4条1項6号について
 商標法4条1項6号の規定に関し、工業所有権法逐条解説によれば、「六号の立法趣旨はここに掲げる標章を一私人に独占させることは本号に掲げるものの権威を尊重することや国際信義の上から好ましくないという点にある。尚、本号は八号と異なり、その承諾を得た場合でも登録しないのであるから、単純な人格権保護の規定ではなく、公益保護の規定として理解されるのである。」と説明されている。
 また、知財高裁平成20年(行ケ)10351号判決において、「商標法4条1項6号の規定は同号に掲げる団体の公共性に鑑み、その権威を尊重すると共に、出所の混同を防いで需要者の利益を保護しようとの趣旨に出たものであり、当該団体を表示する著名な標章と同一又は類似の商標については、当該団体の権威を損ない、又、出所の混同を生ずるものとみなして、無関係の私人による商標登録を排斥するものであると解するのが相当である。」旨判示されている。

(2) 本願商標の本号の該当性について
 ア 「AMeDAS」の著名性について
 「AMeDAS」について、気象庁のホームページには、「アメダス(AMeDAS)とは『Automated Meteorological Data Acquisition System』の略で、『地域気象観測システム』といいます。降水量、風向・風速、気温、日照時間の観測を自勤的に行い、気象災害の防止・軽減に重要な役割を果しています。アメダスは1974年11月から運用を開始し、現在降水量を観測する観測所は全国に約1,300ケ所あります。・・・」と記載されています。
 そして、「AMeDAS」(アメダス)の語は広辞苑等多数の辞書等に掲載されているばかりでなく、テレビ等で放送される毎日の気象情報等において頻繁に使用され、国民の間に広く知られている。
 そうとすれば、「AMeDAS」の文字は気象庁が1974年より行っている気象観測の事業における「地域気象観測システム」を表示する標章として一般に広く知られている。
 してみれば、「AMeDAS」は気象庁が行っている公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する著名な標章と認められる。

 イ 本願商標と引用標章との類否について
 上記の通り、引用標章「AMeDAS」は構成文字に相応して「アメダス」の称呼及び「地域気象観測システム」の観念を生ずるものである。
 一方、本願商標は「AMEDAS」の文字よりなる処、構成文字に相応して「アメダス」の称呼を生じ、構成中3文字目が引用標章とは相違するが、全体の構成文字が共通し、「地域気象観測システム」を連想等することも少なくないから、本願商標は該観念を生ずるとみるのが相当である。
 外観において両商標を比較するに本願商標「AMEDAS」と引用標章「AMeDAS」とでは、3文字目において大文字と小文字の相違があるに過ぎず、全体の構成文字が共通するから、両者は外観上類似する。
 称呼において、本願商標は引用標章と「アメダス」の称呼を共通にするから、称呼上類似の商標である。
 観念において、上記の通り、本願商標は構成文字から「アメダス(地域気象観測システム)」を連想等する場合もあり得、引用標章は「アメダス(地域気象観測システム)」の観念を生ずるから、両者は共に「アメダス(地域気象観測システム)」の観念を共通にし、観念上も類似する。
 してみれば、本願商標は引用標章と外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛らわしい類似の商標というべきである。
 従って、本願商標は「アメダス/AMeDAS(地域気象観測システム)」を表示する著名な引用標章と類似の商標といわなければならない。

 (3) 請求人の主張について−以下、省略−

(4) まとめ
 本願商標は気象庁若しくはその機関における気象観測といった公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章として著名な「AMeDAS」と類似する商標というべきものであるから、「AMeDAS」の標章とは無関係の一私人たる請求人が、本願商標を独占することは、公益保護の観点からも適当であるとは言えない。
 従って、本願商標が商標法4条1頂6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取消すことはできない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '12/4/25