最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「NHKCIS」は、外観上一体的に表され、生ずる称呼も一連に称呼し得るため、「日本放送協会」の略称を含むというよりも、全体で一体不可分の造語と認識されるから、公益団体を表示する著名な標章「NHK」とは類似しないとして、商標法4条1項6号に該当しない、と判断された事例
(不服2011-2545、平成23年10月21日審決、審決公報第144号)
|
1 本願商標 |
本願商標は「NHKCIS」の文字を横書きしてなり、第9類「配線付きハードディスクドライブ用サスペンション」を指定商品として、平成21年1月26日に登録出願されたものである。
|
2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は「本願商標は『NHKCIS』の文字を書してなり、該文字は極めて冗長で、常に一体不可分のものとしてのみ認識される特段の事情は見出し得ず、取引者、需要者は冒頭の『NHK』の文字部分に着目し、これをもって取引に当たる場合も少なくなく、又、『日本の公共放送を実施している事業体』である日本放送協会の著名な略称『NHK』を含むから、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する著名な標章と類似の商標と認める。従って、本願商標は商標法4条1項6号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
|
3 当審の判断 |
本願商標は「NHKCIS」の文字を横書きしてなる処、構成各文字は、同書、同大、等間隔に外観上一体的に表され、構成全体から生ずる「エヌエイチケーシーアイエス」の称呼も一連に称呼し得る。 そうとすると、本願商標は構成中「NHK」の文字が「日本放送協会」の略称として知られているとしても、かかる構成においては、看者をして「日本放送協会」の略称として直ちに認識されるとは言い難く、むしろ、本願商標の構成文字全体をもって特定の意味合いを有しない一体不可分の造語を表したものと認識されるとみるのが相当である。 してみれば、本願商標を指定商品に使用しても、取引者、需要者は「NHK」の文字部分から「日本放送協会」を連想、想起することはないから、本願商標は上記公益団体を表示する著名な標章とは類似しない。 従って、本願商標が商標法4条1項6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
|
1 本願商標 |
本願商標は別掲の通りの構成よりなり、第33類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2009年(平成21年)12月22日に国際商標登録出願されたものである。
|
2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は指定商品との関係において『アルコ一ル度数が42%以下』という商品の品質を通常使用される態様の域を出ない方法で表示されているから、自他商品識別機能を発揮できないものと認める。従って、本願商標は商標法3条1項3号に該当する」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
|
3 当審の判断 |
本願商標は、別掲の通り、太字で大きく書した数字の「4」及び「2」を、若干の段差が生ずるように「4」を低く「2」を高く左右に並べて表し、該数字の下に数字全体の横幅に合わせ、かつ、「4」の数字に接する形で細い横線を引き、さらに、該横線の下に「〜より少ない。〜以下で。」の意味を有する英語「BELOW」をそのままの構成態様で「B」の文字部分が真上にくるように90度右に回転させて「2」の下側にその横幅に合わせて縦書となるようにバランス良く配し、全体として若干丸みを帯びた構成よりなる処、原審説示の意味合いを暗示させるとしても、指定商品との関係において、商品の品質を直接的、具体的に表示するものとは認められない。 また、当審において職権をもって調査したが、数字と「BELOW」の組合せが、指定商品の分野において、商品の品質等を表示するものとして、取引上普通に使用されている事実も見出すことはできなかった。 してみれば、本願商標はこれをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得る。 従って、本願商標を商標法3条1項3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものではなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |