最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「」は、ありふれた氏「亀山」と商品名「蝋燭」との結合商標であるとしても、ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とは言えない、と判断された事例
(不服2011-6907、平成23年11月16日審決、審決公報第145号)
 
1 本願商標
 本願商標は上掲の通り「亀山蝋燭」の文字を横書してなり、第4類「ろうそく」を指定商品として、平成22年3月12日に登緑出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は「本願商標はありふれた氏と認められる『亀山』と本願の指定商品名『蝋燭』とを連結した『亀山蝋燭』の文字を普通に用いられる態様で書してなるから、これをその指定商品に使用しても、単にありふれた氏を表示するに過ぎないものと認める。従って、本願商標は商標法3条1項4号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は上掲の通り「亀山蝋燭」の文字を横書してなるものである。
 商標が商標法3条1項4号の「ありふれた氏(又は名称)」に該当するか否かは、その商標全体として「ありふれた氏(又は名称)」に該当するか否かによって判断すべきである。
 そこで、本願商標についてみると、本願商標がありふれた氏に該当しないこと明らかであり、又、職権により調査するも、「亀山蝋燭」が一般にありふれた名称として採択、使用されている事実は発見できなかった。
 そうとすれば、たとえ、「亀山」の文字がありふれた氏であり、「蝋燭」の文字が指定商品を表すものであるとしても、それらを結合してなる本願商標は、ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ということはできない。
 従って、本願商標が商標法3条1項4号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標(別掲)は、構成中の文字が「TSUTSUIHAJIME」であって、戸籍簿上の氏名「筒井 肇」ではないから、商標法4条1項8号に規定する「他人の氏名」を含む商標とは言えない、と判断された事例
(不服2010-28871、平成23年12月8日審決、審決公報第145号)
(本願商標)
 
1 本願商標
 本願商標は別掲の通りの構成よりなり、第8類及び第21類の商品を指定商品として、平成21年7月28日に登録出願され、その後、第21類「はし、はし箱、はし置き、はしを入れる袋、はし入れ」に補正されている。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は「本願商標は『筒井 肇』の氏名を欧文字表記したものと認められる『TSUTSUIHAJIME』の文字を有してなる処、インターネット検索によれば、3名の『筒井 肇』氏が現存し、当該他人の承諾を得ているものとも認められない。従って、本願商標は商標法4条1項8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、別掲の通り、黒色正四角形内に、一段目に「TSUTSUI」の欧文字、二段目に「HAJIME」の欧文字、三段目に左横を向いたヒヨコと思しき図形と「×」の記号と瓢箪と思しき図形の組み合わせ及び四段目に「HYOZAEMON」の欧文字をそれぞれ白抜きに四段に表してなる文字、図形及び記号の結合商標である。
 商標法4条1項8号の趣旨は氏名等に関する他人の人格的利益を保護することにあると解される処、同号が他人の名称について著名性を要件としていないのに対し、他人の略称についてはこれを要件としているのは、これを使用する者がある程度恣意的に選択する余地があること、著名な略称であって初めて名称と同様に特定人を指し示すことが明らかとなり、氏名と同様に略称が保護されるべきことによるものと解されるから、同号の他人の名称とは使用する者が恣意的に選択する余地のない名称、即ち、会社の商号等法令上の正式名称であるとされている。
 上記を踏まえると、同号の「他人の氏名」とは使用する者が恣意的に選択する余地がなく、特定人を指し示す法令上の正式な氏名であって、日本人の氏名の場合、戸籍簿で確定される氏名が「他人の氏名」に当たる。
 そこで、本願商標について検討するに、原審が引用する他人の氏名はいずれも漢字で表記された「筒井 肇」であり、これが戸籍簿上の氏名でもあると推認される処、本願商標の構成中にあるのは欧文字表記「TSUTSUIHAJIME」であって、漢字表記「筒井 肇」ではないから、本願商標は同号の「他人の氏名」を含む商標ということができない。
 従って、本願商標を商標法4条1項8号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '12/8/21