最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「」は、「大学」の文字を有していても、学校教育法により認可を受けている一般的な大学を表したものとは認識し難いから、「大学」という教育施設であるかの如く世人を欺瞞し又は社会公共の利益並びに一般道徳観念に反するものとは言えない等、と判断された事例 (不服2011-12338、平成23年12月22日審決、審決公報第146号)
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1 本願商標 |
本願商標は上掲の構成よりなり、第16類、第18類、第25類及び第41類の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成22年8月17日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は「本願商標はその構成中に学校教育法により使用を禁止されている名祢である大学の文字を有しており、同法に基づき正規の手続によって、大学の設置についての認可を受けているとは認められない出願人が採択使用することは同法の趣旨に反し一般の人を誤信させ、公の秩序を害する虞があり、穏当でないものと認める。従って、本願商標は、商標法4条1項7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は上掲の通り「日本夢大学」(但し、「夢」及び「学」の字は旧字体)の文字を表してなる処、該文字は学校教育法に基づいて設置された一般的な大学名を表したものと理解されるとは言い難く、たとえ、その構成中に「大学」の文字を有していても、これに接する取引者、需要者をして、直ちに同法により認可を受けている一般的な大学を表したものと認識するとは考え難いものであるから、本願商標は全体として造語と理解されるというのが相当であって、それをもって、「大学」という教育施設であるかの如く世人を欺瞞し又は社会公共の利益並びに一般道徳観念に反するものとは言えないものであり、かつ、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められない。 そうとすれば、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、公の秩序又は善良の風俗を害する虞がある商標ということができない。 従って、本願商標が商標法4条1項7号に該当するとした原査定は妥当でなく、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「」は、構成中の各文字が異なる書体等で表され、商品の規格・品番等を表示するための記号・符号としては特殊な態様で表されているから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標ではない、と判断された事例 (不服2011-650047、平成23年11月14日審決、審決公報第146号)
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1 本願商標 |
本願商標は上掲の通りの構成よりなり、第9類「Eyewear, namely, eyeglass frames」等を指定商品として、2008年(平成20年)10月28日に国際商標登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は「本願商標は商品の規格・品番等を表示する記号・符号として普通に使用されているローマ字2字の一類型からなるものであり、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であるから、商標法3条1項5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は、上掲の通り[Gc」の欧文字をデザインしてなる処、一般にローマ字2字は、商品の規格・品番等を表示する記号・符号として普通に使用されるものであり、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であるが、本願商標は構成中の「G」及び「c」の各文字が明らかに異なる書体で表され、かつ、「c」の文字が「G」の文字の半分程度の大きさからなり、その特徴が強く印象に残るものである。 かかる構成の本願商標は一体的にデサインされたものと認識されることからすると、商品の規格・品番等を表示する記号・符号として類型的に使用される域を脱する特殊な態様からなるものとみるのが相当である。 また、当審において、職権をもって調査した処、本願の指定商品を取り扱う楽界において、本願商標のようにローマ字2字がそれぞれ異なる書体で表され、かつ、文字の大きさが異なった態様の標章が、商品の規格・品番等を表示する記号・符号として普通に使用されている事実は発見することができなかった。 そうとすれば、本願商標は極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標ではなく、自他商品識別機能を十分果し得るものである。 従って、本願商標が商標法3条1項5号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。 その他、政令の期間内に、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |