最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「GALAPAGOSstation」は、構成中の「GALAPAGOS」が世界遺産の「ガラパゴス諸島」を認識させる場合があるとしても、同書・同大・等間隔に纏り良く表され、全体で一種の造語と看取されるため、「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」の権威を損なわず、国際信義に反しない、と判断された事例
(不服2011-18689、平成24年3月22日審決、審決公報第149号)
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1 本願商標 |
本件商標は「GALAPAGOSstation」の欧文字を標準文字で表してなり、第9順に属する願書に記載された通りの商品を指定商品(第9類「コンピュータソフトウェア」に補正)として、平成22年8月2日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標はその構成中に『GALAPAGOS』の欧文字を有するものである処、該文字はユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録されている、エクアドルの『ガラパゴス諸島』を認識させるから、これを一法人である出願人が自己の商標として採択・使用することは、国際信義に反すると言わざるを得ない。従って、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は「GALAPAGOSstation」の文字よりなる処、構成中「GALAPAGOS」の文字部分がユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録されている、エクアドル「ガラパゴス諸島」を認識させる場合があるとしても、本願商標を構成する「GALAPAGOSstation」の文字は同書、同大、等間隔に纏り良く書されており、全体として一種の造語を表したものと看取される。 そうすると、「GALAPAGOSstation」の文字よりなる本願商標を、その指定商品に使用しても、世界遺産の「ガラパゴス諸島」を想起させ、認識させるものということはできないから、本願商標を使用することが「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」の権威を損ない、国際信義に反するということにはならない。 従って、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消を免れない。 その他、本願について、拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「」は、ブラジルの一都市名と認識されることがあったとしても、指定商品の産地・販売地表示として認識されるものではなく、自他商品の識別機能を有する、と判断された事例 (不服2010-650106、平成24年3月15日審決、審決公報第150号)
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1 本件商標 |
本件商標は「MACAE」(注:「E」の上にアクセントが付く。以下「MACAE」と表記する。)の欧文字を横書きしてなり、第30類「Cocoa,Chocolate」等を指定商品として、2009年2月11日にフランス共和国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2009年7月10日に国際商標登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は「本願商標はブラジルのリオデジャネイロ州にある有名な地名である『MACAE』の文字を普通に用いられる方法で書してなるものであるから、これを本願指定商品に使用するときは、商品の産地又は販売地を表示するものである。従って、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は、上記の通り「MACAE」の文字を横書きしてなる処、該文字はコンサイス外国地名辞典第3版によれば、「ブラジル南東部、リオデジャネイロ州中部の都市。牧牛、製糖業が発達。」の都市名であることは認められる。 しかしながら、その都市名がわが国において広く一般に知られているとは認め難いものであり、本願の指定商品の産地、販売地であるというような事情も認められないから、本願商標からは、取引者、需要者をしてブラジルの一都市と認識される場合があったとしても、そのことをもって直ちに指定商品の産地、販売地であると認識するとまでは言い難い。 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において商品の産地、販売地表示として、普通に使用されている事実も見出すことができなかった。 そうとすれば、本願商標はこれをその指定商品について使用しても、商品の産地又は販売地を表すものとして認識され得るものではなく、指定商品の識別機能を十分に果し得るものである。 従って、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |