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 商標「GoldeniSO」(別掲)は、前半の「Golden」が色彩表示又は誇称表示として品質等を表す語であり、外観上も、色彩の違いにより前半の「Golden」と後半の「iSO」に分離して看取されるため、公益団体であって営利を目的としない「国際標準化機構」の著名な略称と類似するから、商標法第4条第1項第6号に該当する、と判断された事例
(不服2011-650002、平成23年11月22日審決、審決公報第151号)

  (別掲) 
 
1 本願商標
 本願商標は別掲の通りの構成よりなり、第6類及び第17類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、イタリア共和国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2007年8月27日に国際商標登録出願されたものである。その後、指定商品については、補正されている。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は『GoldeniSO』の文字を表してなる処、その構成中の『iSO』の文字はスイスのジュネーブに本部を置く民間の非政府組織である「International Organization for Standerdization(ISO)』の著名な略祢『ISO』と類似するから、商標法第4条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 商標法第4条第1項第6号は「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」を、商標登録を受けることができない商標と定めている処、その趣旨は、ここに掲げる標章を一私人に独占させることは、本号に掲げるものの権威を尊重することや、国際信義の上から好ましくないという点にあるものと解される。
 ところで、「国際標準化機構」は、スイス国ジュネーブに本部を置いて1947年に発足し、電気分野を除く工業分野の国際的な標準規格を策定するための国際的な非営利組織であり、2009年末現在、世界162カ国の各種団体が会員として参加し、上記各分野に18,083の規格を定めている。我国では、1952年に日本工業標準調査会が加入し、経済産業省も標準化による経済活動の推進のために取り組んでいるものであり、品質管理規格であるISO9000シリーズや、環境管理規格であるISO14000シリーズ等のマネジメントシステムに関する規格が多くの企業等に導入されているところである。
 そうすると、「国際標準化機構」は公益に関する団体であって営利を目的としないものであり、その略称である「ISO」は「国際標準化機構」を表示するものとして我国のみならず、世界各国において需要者の間に広く認識されている、所謂著名なものと認め得るものである。

 そして、本願標章は「GoldeniSO」の欧文字を書してなる処、構成中前半部の「Golden」の文字部分を黄色、後宇部の「iSO」(「i」の上部の点は赤色)の文字部分は、黒色で表してなるものであり、「Golden」の文字部分は「金色の。素晴らしい。最高の。」等の意味を有し、色彩表示又は誇称表示として品質等を表す語として普通に使用される。また、外観上も、色彩の違いから、容易に「Golden」と「iSO」の各文字部分に分離して看取される。さらに本願商標を常に一体不可分のものとみるべき特段の事情は見出し得ない。
 そうとすれば、構成中の「iSO」の文字部分は語頭の「i」の文字が小文字であったとしても、「国際標準化機構」の著名な略称である「ISO」とその綴り、「アイエスオー」又は「イソ」の称呼及び観念を同じくするから、本願商標は上記略称と類似する商標というのが相当である。
 してみれば、本願標章は公益団体、かつ、営利を目的としないものを表示する標章であって、著名なものと類似する商標と言わざるを得ない。
 従って、本願商標は商標法第4条第1項第6号に該当する。

 尚、請求人は、本願商標全体から生じる「ゴ一ルデンアイエスオ一」及び「ゴ一ルデンイソ」の呼称は前者が9音、後者が6音であるから、祢呼の長さは必ずしも冗長とは言えず、需要者等により分離して呼称される可能性はなく、又、色彩により分離するとしても、構成中の「i」の上部の点が赤色で、下部の線が黒色であるため、「i」と「SO」との一体性を欠き、「Golden」と「i」と「SO」に分離されると主張する。
 しかしながら、本願商標構成中「Golden」の文字部分は、前記意味合いの品質表示として使用され、自他商品の識別力が弱いものである。加えて、「iSO」の文字部分は黒を基調として纏まり良く表されているから、該文字部分が一体として強く支配的な印象を与える。
 従って、請求人の主張は採用できない。

 以上の通り、本願商標が商標法第4条第1項第6号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取消すべき限りでない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '13/2/24