最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「坂本九」は、指定役務との関係において役務の質を表したものとはいえず、また、これをその指定役務のいずれに使用しても、役務の質について誤認を生ずる虞がないから、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない、と判断された事例
(不服2011-10130、平成24年6月22日審決、審決公報第152号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「坂本九」の文字を標準文字で表してなり、第9類及び第41類に属する願書記載の通りの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成21年5月11日に商標登録出願され、その後、第41類の役務「コンピュータネットワークを介した音楽の演奏に関する情報の提供,コンピュータネットワークを介した映画の上映に関する情報の提供,…映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,…音楽の演奏,音楽の演奏に関する情報の提供等」に補正された。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は『坂本九』の文字を標準文字で表してなる処、これをその指定商品・指定役務中の音楽・映像・出版物に関する商品・役務に使用するときは、これに接する取引者・需要者はその商品・役務が『故坂本九氏の歌や映像等を内容とするものであること』を表示したものと理解するに過ぎないから、本願商標は単に商品の品質(内容)、役務の質(内容)、役務の提供の用に供する物等を表したものと認める。従って、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品・役務以外の商品・役務に使用するときは、商品の品質、役務の質について誤認を生じさせる虞があるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願の指定商品及び指定役務は、前記1の通り補正された処、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、これが役務の質(内容)を表したものと認識されるとは認められない。
 してみれば、本願商標はその指定役務との関係において役務の質を表したものとはいえず、また、本願商標をその指定役務のいずれに使用しても、役務の質について誤認を生ずる虞があるとは言えない。
 従って、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 別掲商標は、全体として図案化された特徴的なものであるから、自他商品の識別機能を十分に果し得、商標法第3条第1項第5号に該当しない、と判断された事例
(不服2011-650168、平成24年5月31日審決、審決公報第152号)
別掲(本願商標)
 
1 本願商標
 本願商標は、別掲の通りの構成からなり、第12類、第14類及び第28類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2009年11月20日にドイツ国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2010年3月10日に国際商標登録出願され、その後、指定商品については、原審において補正されている。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は『A』の欧文字と『7』の数字とを横一連に書してなる処、多少図案化されているとしても、欧文字1字の『A』と数字1字の『7』であることを容易に認識させるものであるから、本願商標は極めて簡単、かつ、ありふれた標章からなるものであり、自他商品の識別機能を果たさないものである。従って、本願商標は商標法第3条第1項第5号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、別掲の通りの構成からなる処、該構成中の左部分について「A」の欧文字を表したものと理解されるとしても、右部分については直ちに「7」の数字を表したものと理解されるとは言い難く、また、左部分に比して右部分が約3分の2程度に高さを変えて表されていることから、本願商標全体として図案化された特徴的なものというのが相当である。  してみれば、本願商標は極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とは言えないから、これをその指定商品について使用しても、自他商品の識別機能を十分に果し得るものというべきである。  従って、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。  その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。  よって結論の通り審決する。

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '13/4/1