最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 別掲A(本願商標)は、「炭酸茶」の漢字を表したものの、一種独特な反りの特徴を持たせることで、視覚上特異な商標として看取させ、取引の指標とするものであるから、自他商品の識別機能を有する、と判断された事例
(不服2012-2987、平成24年8月21日審決、審決公報第154号)
別掲A(本願商標)
 
1 本願商標
 本願商標は別掲Aの構成よりなり、第30類「炭酸入り緑茶飲料等」及び第32類「緑茶フレーバ等入りの炭酸飲料」を指定商品として、平成23年3月19日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は「本願商標は『炭酸茶』の文字を多少デザイン化しているが、この程度のデザイン化は、特異のデザイン化とは認められず、未だ特殊の態様とは言い難く、普通に用いられている域を脱していない。そしてその構成文字中の『炭酸』の文字は『炭酸水の略』を意味し、例えば、『炭酸水等、炭酸ガスを含む発砲性の清涼飲料水』を『炭酸飲料』と称しており、また、『茶』の文字は『茶の若葉を採取して製した飲料』の意味を有する外、清涼飲料等に加味されることも知られている。そして、インターネット情報によれば、『炭酸水』の文字が使用されていることからすると、本願商標をその指定商品に使用しても、単に前記商品が炭酸水と茶が加味されたもの、即ち、商品の原材料、品質を表示したものと理解されるに止まり、自他商品の識別機能を果たさないものと認める。よって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は別掲Aに示した通り、「炭酸茶」の漢字を表したものと理解し得るものの、「炭」「酸」「茶」の各文字の部首や構成部分には、一種独特な反りの特徴を持たせことで、極めて創造的な印象を受けるものである。
 そうすると、本願商標は原審が説示するような、普通に用いられる方法の域を脱しない態様で表示したものとは言い難く、むしろ、全体として創造的に図案化された文字よりなるものとみるのが相当である。
 してみると、本願商標は視覚上特異な商標として看取させ、取引の指標とするものであるから、自他商品の識別機能を果し得るものというべきである。
 そうとすれば、本願商標は単に商品の原材斜、品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とは言えないものである。
 従って、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶をすべき理由を発見しない。
よって、結論の通り審決する。


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B. 別掲1(本願商標)は、別掲2(引用商標)とは、外観上時と所を異にして離隔的に観察するも、印象が大きく異なり相紛れる虞はない等、と判断された事例
(不服2012-7125、平成24年8月27日審決、審決公報第154号)
別掲1(本願商標)
別掲2(引用商標)
 
1 本願商標
 本願商標は別掲1の構成からなり、第9・16・24・25・28類に属する願書記載商品を指定商品とし、平成23年3月4日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用した登録第4946236号商標は、別掲2の構成よりなり、平成17年8月8日に登録出願、第9類に属する登録原簿記載の商品を指定商品として、同18年4月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 当審の判断
 本願商標は別掲1の通り、左端を基点となるように金色で縁取られた白色の大円中に同じく金色で縁取られた青色の中円を描き、その中に同じく金色で縁取られた赤色の小円を配した構成よりなる処、特定の事物や事象を表したものではなく、何等の称呼、観念をも生じない。
 他方、引用商標は別掲2の通り、中央上部を基点となるように赤色の大円中に白い中円を描き、その中に赤色の小円を配した構成よりなる処、特定の事物や事象を表したものではなく、何等の称呼、観念をも生じない。
 そこで、本願商標と引用商標との類否について検討すると、両商標は外観において、大きさの違う3つの円を一つの基点で重ねた図形からなる点において共通にするとしても、本願商標は金色で縁取られた白色、青色、赤色の3色の円を順番に重ねた印象を与えるのに対し、引用商標は赤色のべた塗り円から内接する三日月形状を白く、くり抜いた如きの印象を与えるものであるから、これらを時と所を異にして離隔的に観察するも、両者の印象が大きく異なり相紛れる虞はないものと判断するのが相当である。
 また、称呼、観念においては、本願商標及び引用商標は何等の称呼、観念を生じないから、両者を称呼、観念上類似のものということはできない。
 そうとすれば、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れる虞のない非類似の商標といわなければならない。
 さらに前記の判断を左右するような取引の実情も見当たらない。
 従って、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '13/6/1