最近の注目審決・判決を紹介します。
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1 本願商標 |
本願商標は別掲の通りの構成からなり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」(その後、「清酒」に補正)を指定商品として、平成23年6月30日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標の構成中、上段の『久保田』の文字は『姓氏の一つ』であり、『久保田』の姓氏は我国において多数存在するありふれた氏と認められる。また、当該『久保田』の文字に使用されている毛筆体の書体は特殊な書体として注目されたり、強い印象を与えたりする程の特徴はなく、さらに本願に係る指定商品を取り扱う業界において、数多く使用され、特徴的なものとはいえないので、普通に用いられる形態であると言え、日常の商取引において姓氏を表す場合には、漢字のみに限らず、平仮名、片仮名又は欧文字で表示する場合も少なくないから、本願商標の構成中、下段の『KUBOTA』の文字は上段の姓氏の『久保田』を欧文字で表記したものと容易に理解されるものである。そうとすると、本願商標はありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、商標法第3条第1項第4号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は別掲の通り、毛筆体の手書き風に書された『久保田』の漢字を横書きに書し、下段に『KUBOTA』の欧文字を書してなる処、構成中、上段の『久保田』は1文字目の「久」が、他の漢字よりも大く書され、さらに、2文字目の「保」の人偏は、やや崩した特徴を有するものである。 そして、当該「久保田」の文字は前記特徴的な書体をもって、請求人の取扱いに係る商品「清酒」に使用して、著名な商標と認められるものである。 そうとすると、本願商標を指定商品に使用するときは、取引者、需要者をして、単なる姓氏「久保田」を認識させるというよりは、むしろ、その指定商品「清酒」との関係及びその特徴的な書体から、請求人の取扱いに係る商品「清酒」に使用して著名な「久保田」を認識させるものである。 してみれば、本願商標は指定商品に使用しても、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とは言えず自他商品の識別機能を果たし得るものである。 従って、本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消を免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「国鉄」は、日本国有鉄道公社が民営化されて25年経過し、既に存在していないから、取引者・需要者をして国鉄と何等かの関わりがあったかの如く誤信させる虞はないし、これを登録することが商取引の秩序を害し、社会的妥当性を欠くとは言えない、と判断された事例
(不服2012-8110、平成24年11月9日審決、審決公報第157号)
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1 本願商標 |
本願商標は「国鉄」の文字を標準文字で表してなり、第14類に属する願書に記載の通りの商品を指定商品として、平成23年4月8日に登録出願、その後指定商品については補正されている。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は「本願商標は『国鉄』の文字を標準文字で表してなる処、該文字は1947年に独立採算の企業的立場で従来の鉄道省・運輸省等による政府直営事業を引き継いだ公共企業体である『日本国有鉄道公社』の著名な略称であり、1987年4月に民営化、その事業は七株式会社に分割して継承されたが、現在もなお日本国有鉄道公社の略称として広く国民一般に知られており、国鉄時代の車両備品や土産物、周遊券・指定券・入場券等の商取引が行われ、国鉄時代を内容とする季刊誌も発行されている。してみれば、本願商標を指定商品に使用した場合、日本国有鉄道公社と関わりがあったかの如く需要者、取引者を誤信させる虞が少なからずあるから、かかるものを商標として採択、使用することは商取引の秩序を害する虞があると言わざるを得ない。従って、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は「国鉄」の文字を標準文字で表してなる処、これはかつて存在した「日本国有鉄道」の略称であるが、日本国有鉄道は1987年に民営化されてから既に25年経過しており、今日において「国鉄」が当時の日本国有鉄道を表すことは理解されるとしても、日本国有鉄道が既に存在していないから、指定商品「時計」との関係において、請求人が本願商標を使用したとしても、鉄道を運営していた日本国有鉄道と関わりがあったかの如く、取引者、需要者が誤信する虞があるとは言い難い。 してみれば、本願商標を指定商品に使用しても、取引者、需要者にその商品が日本国有鉄道と何等かの関係を有する者の商品であるかの如く誤信させる虞があるとは言えず、これを登録することが商取引の秩序を害し、社会的妥当性を欠くということはできない。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消を免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |