最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 別掲A商標は、枡形枠と文字部分との一体性が極めて強く、全体として版画風の印影の如き印象を与えるから、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とは言えず、自他役務の識別機能を有する、と判断された事例
(不服2012-20767、平成25年2月21日審決、審決公報第160号)
別掲A(本願商標)
 
1 本願商標
 本願商標は別掲Aの通りの構成からなり、第43類「とんかつ料理を主とする飲食物の提供、とんかつ料理を主とする飲食物の提供に関する情報の提供」を指定役務として、平成23年12月15日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は黒く太い輪郭の正門角形内に黒く太い輪郭に準ずる太さでとんかつの文字を表してなるから、構成全体としては、ありふれた正四角形内にとんかつの文字を表したものと認識されるに止まり、指定役務に使用しても、単に役務の質(内容)を表示するに過ぎず、自他役務の識別機能を有し得ないものと認める。従って、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は別掲Aの通り、肉太の黒塗り枡形枠内に枡形枠に準ずる太さで「とん」の文字を上段に「かつ」の文字を下段に配し、その枡形枠内に配された「と」「ん」「か」「つ」の各文字が、枡形枠及び隣接する各文字に全て接して配されている構成よりなるから、枡形枠と文字部分との一体性が極めて強く、全体として版両風の印影の如き印象を与える。
 してみれば、たとえ、本願商標中の枡形枠内に配された文字部分が「とんかつ」を書したものと認識され、かつ、その指定役務との関係では、その役務の質(内容)を表示するものであって、自他役務の識別機能を有し得ない部分と言えるとしても、本願商標は上記の通り、全体として版画風の印影の如き印象を与える商標として認識されると言うべきである。
 そうとすれば、本願商標はこれをその指定役務に使用しても、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標示のみからなる商標とは言えず、十分に自他役務の識別機能を有し得る。
 従って、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとした原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 別掲B商標は、引用商標「萬てん」とは、「マンテン」の称呼を共通にするとしても、称呼の共通性が外観、観念における差異を凌駕するとは言い難く、外観・称呼及び観念を総合的に判断すると、全体として非類似と判断された事例
(不服2012-23560、平成25年3月13日審決、審決公報第160号)
別掲B(本願商標)
 
1 本願商標
 本願商標は別掲Bの通りの構成からなり、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、平成24年1月27日に登録出願されたものである。

2 引用商標
 原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第4351030号商標は「萬点」の文字を横書きしてなり、平成10年7月31日登録出願、第42類「・・・,行事用・パーティー用料理のケータリング,その他の飲食物の提供,・・・」を指定役務として平成12年1月14日に設定登録され、その後、平成21年9月1日に商標権の存続期間の更新登録がされ、その商標権は現在有効に存続している。

3 当審の判断
 本願商標は別掲Bの通り、筆文字で「満天」の文字を縦書きしてなる処、「空全体」の意味を有するから、「空全体」の観念を生じ、構成文字に相応して「マンテン」の称呼を生ずる。
 他方、引用商標は「萬てん」の文字を横書きしてなる処、特定の観念を生じない造語と認識され、構成文字に相応して「マンテン」の称呼を生ずる。
 そこで、本願商標と引用商標との類否について検討するに本願商標は筆文字で「満天」の文字を縦書きしてなるのに対し、引用商標は「萬てん」の文字を横書きしてなるから、両商標は外観において明確に区別できる。
 また、本願商標は「空全体」の観念を生ずるのに対し、引用商標は特定の観念を生じないから、両商標は観念において類似するとはいえない。
 そうとすれば、本願商標と引用商標とは、「マンテン」の称呼を共通にするとしても、外観において明確に区別でき、観念において類似するとはいえないから、両商標の比較において称呼の共通性が外観、観念における差異を凌駕するものとは言い難く、外観、称呼及び観念を総合的に判断すると、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等が異なる商標である。
 よって、両商標は役務の出所の誤認、混同を生ずる虞のないものであり、全体として非類似の商標と言うのが相当である。
 以上から、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '13/10/20