最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「駒ケ岳」は、特定の山を指称するものではなく、需要者等が特定の駒ケ岳周辺地域で製造、販売された商品であると認識できないから、自他商品の識別機能を有する、と判断された事例 (不服2012-24252、平成25年6月5日審決、審決公報第163号)
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1 本願商標 |
本願商標は「駒ケ岳」の文字を書してなり、第33類「日本酒、洋酒、果実酒、酎ハイ等」を指定商品として、平成24年1月23日に登録出願された。
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2 原査定の拒絶の理由の要旨 |
原査定は、「本願商標は『駒ケ岳』の文字を普通に用いられる方法で表してなる処、広辞苑第六版によれば、『駒ケ岳』について『北海道渡島半島東側、内浦湾南岸の活火山』『秋田県東部にある二重式火山』等々の記載があり、また、その地方において各々の『駒ケ岳』は、登山はもとより観光地としても著名な名峰の一つであるから、これを指定商品に使用しても、本願商標に接する需要者等は、該商品が上記の駒ケ岳周辺地域で製造、販売された商品であると認識するに止まり、単に商品の産地、販売地等を表示するに過ぎないと認める。従って、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は「駒ケ岳」の文字よりなる処、該文字は「北海道渡島半島東側の駒ケ岳」、「秋田駒ケ岳」、「会津駒」、「越後駒ケ岳」、「甲斐駒ケ岳」、「木曽駒ケ岳」等を意味するものであり、直ちに特定の山を指称するものではなく、また、上記の駒ケ岳周辺地域が観光地として広く知られているとは言い難いものであって、特定の観光地を理解させ得ないから、本願商標を指定商品に使用しても、需要者等は該商品が特定の上記駒ケ岳周辺地域で製造、販売された商品であると認識するとは言えない。 当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取扱う業界において、「駒ケ岳」の文字が商品の産地、販売地等を表示するものとして、取引上、普通に使用されている事実を発見できず、また、需要者等が該文字を商品の産地、販売地等を表示したものと認識すべき事情も見当たらない。 してみれば、本願商標を指定商品に使用しても、需要者等は本願商標を商品の品質等を表示したものと認識せず、自他商品の識別機能を有し得る。 従って、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「杜の都パンダ」は、仙台市のパンダ誘致活動や東日本大震災復興活動と関わりがあるかの如く誤信させる虞はなく、また、一私人である出願人に登録を認めても上記復興活動についての利益の独占を図るものとはいえないから、社会一般の公共利益に反せず、公の秩序を害しない、と判断された事例
(不服2012-18800、平成25年5月30日審決、審決公報第163号)
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1 本願商標 |
本願商標は「杜の都パンダ」の文字を標準文字で表してなり、第28類及び第30類の商品を指定商品として、平成23年12月26日に登録出願された。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は『杜の都パンダ』を標準文字で書してなる処、構成中『杜の都』はインターネット情報によると、宮城県仙台市の愛称を『杜の都』と称する実情が見受けられる。すると、『杜の都』は仙台市を指すものと理解できる。そして、仙台市では、東日本大震災による被災者を勇気づけ、復興のシンボルとして活用する為に中国からジャイアントパンダを誘致する取組を進めている実情が窺える。『杜の都』の意味、仙台市が行っている活動についての実情を総合的にみると、本願商標は全体として『仙台市のパンダ』を意味すると理解できる。すると、本願商標を指定商品に使用したときは、仙台市のパンダ誘致活動と関わりがあるかの如く需要者等に誤信させる虞があると共に、これを一私人である出願人が商標登録することは、上記復興支援活動についての利益の独占を図るものであるから、社会一般の公共利益に反し、公の秩序を害する。従って、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する」旨判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は「杜の都パンダ」の文字からなり、構成中「杜の都」の文字は仙台市、上越市、真庭市等の雅称及び愛称であり、仙台市については「杜の都 仙台」等と使用され、知られている。 また、仙台市役所のウェブサイト等から、仙台市が東日本大震災からの復興のシンボルとなるよう、八木山動物公園にジャイアントパンダを誘致する取組を進めている実情が認められる。 しかし、「杜の都パンダ」の文字が仙台市のパンダ誘致活動や東日本大震災復興活動を表す等の為に使用されている事実は確認できない。「杜の都パンダ」の文字が仙台市のパンダ誘致活動及び上記復興活動に関わりがあると誤信させるような事情も認められない。 そうすると、本願商標を指定商品に使用しても、需要者等に仙台市のパンダ誘致活動と関わりがあるが如く誤信させる虞があるとは言えず、また、一私人である出願人が本願商標を登録することは、上記復興活動についての利益の独占を図るものとはいえない。 従って、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |