最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 別掲商標は、構成中「寿司ざんまい」の文字自体が独立して自他商品識別機能を有しない為、称呼・観念は生じず、又、外観上明らかな差異があるから、引用商標「すしざんまい」とは、互いに相紛れる虞なく非類似、と判断された事例
(不服2012-23990、平成25年6月28日審決、審決公報第164号)
別掲
(本願商標)
 
1 本願商標
 本願商標は別掲の通りの構成からなり、第30類「すし」を指定商品として、平成22年5月6日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は『すしざんまい』の平仮名を標準文字で表してなる登録第5511447号商標(引用商標)と、『スシザンマイ』の称呼及び『心ゆくまですしを食べるさま』の観念を共通にする類似の商標であって、同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は別掲の通り、文字と図形からなり、「すし」を指定商品とする処、構成中の「寿司ざんまい」の文字についてみると、各種の食に関する分野においては、「焼肉ざんまい」、「焼鳥ざんまい」、「魚ざんまい」、「肉ざんまい」等のように料理名や食材名と「ざんまい」の語を結合して販売促進のために使用されている事実があることからすると、「寿司ざんまい」の文字を「すし」に使用するときは、需要者は宣伝のための語を表したものと認識するに止まる。
 そうすると、本願商標の構成中「寿司ざんまい」の文字自体は、独立して自他商品の識別機能を果たし得ず、原審説示のように、本願商標から「スシザンマイ」の称呼及び「心ゆくまですしを食べるさま」の観念は生じない。
 また、本願商標と引用商標とは、外観においては、構成上明らかな差異を有するものであるから、相紛れる虞はない。
 してみれば、本願商標から「スシザンマイ」の称呼及び「心ゆくまですしを食べるさま」の観念が生じるとし、これを前提に本願商標と引用商標が称呼及び観念上類似するとして、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「ハイリスクハイリターン」は、役務のキャッチフレーズ又は内容等を表示するものではなく、自他役務の識別機能を果たし得、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識できない商標とはいえない、と判断された事例
(不服2013-8010、平成25年7月16日審決、審決公報第164号)
 
1 本願商標
 本願商標は「ハイリスクハイリターン」の文字を標準文字で表してなり、第45類に属する役務を指定役務として、平成24年10月29日に登録出願されたものである。その後、指定役務について補正されている。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は『ハイリスクハイリターン』の文字を普通に用いられる方法で表してなる処、これよりは『一般に収益が大きければそれに伴う危険性も大きいという原則』の意味を理解・認識させる以上に格別顕著なところはなく、これを本願指定役務に使用しても、自他役務識別機能を果たし得ず、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標と認める。従って、本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は「ハイリスクハイリターン」の文字を標準文字で表してなる処、構成文字全体から原審説示の意味合いを認識させる場合があるとしても、指定役務との関係において、直ちに識別力がない商標とまではいえず、その役務のキャッチフレーズを表し、又は内容等を直接又は具体的に表したものと認識させるものとも言い難い。
 そして、当審において職権をもって調査するも、本願指定役務を取扱う業界において、「ハイリスクハイリターン」の文字が役務のキャッチフレーズ又は内容等を表示するものとして、取引上普通に使用されている事実を発見できなかった。
 してみれば、本願商標はこれをその指定役務について使用しても、自他役務の識別機能を果たし得るものであり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識できない商標とはいえない。
 従って、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '14/3/5