最近の注目審決・判決を紹介します。
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1 本願商標 |
本願商標は、別掲の通りの構成よりなり、第3・29・30・32・35・41・43類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成24年3月5日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標はその構成中に『オーストリアの王家であったハプスブルク家』を看取させる『Habsburg』の文字を有してなるものであるから、これを該王家と何等関係のない出願人が、本願商標をその指定商品について採択使用することは、オーストリア国国民の感情を害し、国際信義の観点に照らして穏当でない。従って、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は、別掲の通り、内側の縁が太い二重線で描かれた円形の輪郭内に、直立した2頭の鷲と思しき鳥が両側から王冠を頭上で支える態様からなる王紋章様の図形があり、その図形中には、「T」「H」の各欧文字を有し、かつ、その図形下に「Habsburg」の欧文字を配した構成よりなるものである。
そして、その構成中「Habsburg」の文字はかつて存在したオーストリアの王家「ハプスブルク家」を意味するものである処、フリー百科事典ウィキペディアによれば、該ハプスブルク家の最後の皇帝カール一世は、1918年にオーストリア=ハンガリー帝国から亡命し、それ以降、ハプスブルク家は君主としての地位を失っている。現在、オーストリア共和国は連邦共和制の国家である。 そうしてみると、該「Habsburg」の文字は原審説示のように「オーストリアの王家であったハプスブルク家」を看取させる場合があるとしても、1918年に君主としての地位を失ってから、既に95年の歳月が経過しており、今日において、「オーストリアの王家としてのハプスブルク家」が存在していないことは周知であることから、請求人が本願商標を使用したとしても、「(オーストリアの王家としての)ハプスブルク家」と関わりがあるかの如く、取引者、需要者が誤信等する虞があるとは、もはや言い難いものであって、さらに、オーストリア国民の感情を害するとまでは認められないというのが相当である。 また、当審において調査したが、「ハプスブルク家」の尊厳や権威等を保護するべき事情は認められず、該文字を商標として採択使用することが、オーストリア国民の感情を害すると認め得る証左は、発見することができなかった。 してみれば、本願商標は国際信義に反するものというべき事情はなく、また、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような構成でないことは明らかであり、かつ、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものではなく、加えて、他の法律によってその使用が禁止されているものとすべき事実も認められないものである。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |