最近の注目審決・判決を紹介します。
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1 本願商標 |
本件登録第5404022号商標は、別掲の通りの構成からなり、平成21年3月4日に登録出願、第35類「ゴルフに関するフランチャイズ事業の運営等」、第41類「インドアゴルフ練習場の提供など」及び第43類「飲食物の提供」を指定役務として、平成22年5月25日に登録査定、同23年4月8日に設定登録されたものである。
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2 請求人の主張 |
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至甲第23号証を提出している。
・無効理由
本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第19号及び同第7号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。(以下、省略)
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3 被請求人の主張 |
被請求人は、請求人の主張に対し、何等答弁していない。
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4 当審の判断 |
(1)「Augusta」及び「オーガスタ」の著名性について
請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事が認められる。 「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」は、アメリカ合衆国ジョージア州オーガスタ社の請求人が経営するゴルフ場の名称であり、また、当該ゴルフ場において、世界の4大ゴルフトーナメントの一つである「マスターズ・トーナメント」が開催されるものである。 マスターズ・トーナメントは1934年に開催されて以来、長年にわたり、毎年、上記ゴルフ場のコースでのみ行われており、世界的に有名な選手の活躍などもあって、数々の歴史的に語られる競技内容や競技者を誇る伝統あるゴルフトーナメントとして、我国においても一般に広く知られている。 また、マスターズ・トナメントが開催される唯一のゴルフ場であるオーガスタ ナショナル ゴルフ クラブは、トーナメントが開催される際の特集号のみならず、本件商標の出願日前までに継続して発行された「週刊ゴルフダイジェスト」「月刊ゴルフダイジェスト」「Choice」のゴルフ専門誌、「Number」等のスポーツ雑誌において、「Augusta」又は「オーガスタ」の表示をもって、継続して数多く紹介されており、又、「週刊ダイヤモンド」「週刊新潮」「Yomiuri Weekly」「週刊東洋経済」等の一般の雑誌においても、同様の紹介がされている。 以上の認定事実によれば、「Augusta」又は「オーガスタ」の語は本件商標の出願時及び査定時に、マスターズ・トーナメントが開催される米国ジョージア州オーガスタにある請求人が経営するゴルフ場「Augusta National Golf Club (オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」の略称として、また、当該ゴルフ場にて提供される請求人の業務に係る役務を表すものとして、我国のゴルフに関連する商品又は役務の取引者・需要者間で広く認識されるに至つていたものと認められる。 (2)本件商標について 本件商標は上部に月桂樹様の装飾図形の内側にゴルフスイングをする人物の上半身をシルエット状に描いた図形を表し、その下部に「Augusta Club」の欧文字を太く大きく表し、さらに、その下に「GOLF BAR・オーガスタクラブ」の文字を「Augusta Club」の欧文字に比べ小さく表した構成からなる。 しかして、本件商標はその構成により、令体として「Augusta Club (オーガスタクラブ)」という名称の「GOLF BAR (ゴルフバー:ゴルフのシミュレーション機器を備えた室内のゴルフ練習場に飲食や酒類のサービスを加えた店舗や娯楽旅設)」を表したものと理解、認識させる。 そして、「Augusta Club」の欧文字部分は、「Club」の欧文字が、ゴルフに関連する役務について、自他役務の識別機能を有しないか、極めて弱いから、「Augusta」の文字部分が独立して着目され得る。 (3)本年商標の指定役務と請求人の役務との関連性及び需要者等について 本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務は、いずれもゴルフに関連する役務であるから、役務の質、用途、提供の用に供する物等を共通にする、極めて関連性が高く、かつ、その取引者、需要者を共通にする。 (4)商標法第4条第1項第15号該当性について 「Augusta」又は「オーガスタ」は本件商標の出願時及び査定時において、請求人が経営するゴルフ場「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」の略称として、また、請求人の業務に係るゴルフ場に関連する役務を表すものとして、我国の取引者・需要者間で広く認識されるに至っている。 本件商標は、構成甲「Augusta」の欧文字部分が独立して着目され得るものであって、本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務との関連性及び取引者、需要者の共通性等を勘案すれば、商標権者が本件商標をその指定役務に使用した場合、該文字部分から、請求人の業務に係る「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」を連想させ、当該役務を請求人或いは同人と経済的又は組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせる虞がある。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 (5)まとめ 本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号によりその登録を無効とすべきである。 よって、結論の通り審決する。 |