最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「南ASOの天然水」は、「南ASO」が特定の産地、販売地を表示しないから、商品の品質を直接的かつ具体的に表示するものではなく、補正により商品の品質の誤認を生ずる虞もなくなった、と判断された事例 (不服2013-7937、平成25年9月27日審決、審決公報第167号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「南ASOの天然水」の文字を標準文字で表してなり、第32類「飲料水,清涼飲料,果実飲料」を指定商品として、平成24年7月4日に登録出願されたものである(後に、「天然水」に補正)。
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2 原査定の拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標は『南ASOの天然水』の文字を標準文字で表してなる処、構成中の『南ASO』は本願指定商品との関係において、『熊本県南阿蘇村』を看取させるものであり、又、『天然水』は商品の普通名称であるから、本願商標を指定商品中、上記文字に照応する商品、例えば『熊本県南阿蘇村で製造又は販売される天然水』について使用しても、単に商品の品質(産地、販売地)を普通に用いられる方法で表示したものと認識させるに過ぎず、自他商品識別機能を有しないものと言わなければならない。従って、本願商標は商標法第3条1項第3号に該当し、上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせる虞があるから、同法第4条第1項第16号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は前記1の通り、「南ASOの天然水」の文字を標準文字で表してなる処、構成中「南ASO」の文字部分は、漢字と欧文字とを結合した構成からなるものであって、かかる構成においては、該文字部分が、直ちに原審説示の地名を表示するものとして看取、認識されるとは言い難い。 さらに、当審において職権調査するも、構成中「南ASO」の文字が、特定の産地、販売地を表示する語として一般に広く使用されている事実は見出せず、又、「南ASOの天然水」の文字が、商品の品質を直接的かつ具体的に表示するものとして認識されると認めるに足る事実も見出せなかった。 してみれば、本願商標を指定商品について使用した場合、商品の品質を表したものと認識されるとは言えず、自他商品の識別機能を有するものである。 また、本願の指定商品が補正された結果、本願商品は、これをその指定商品に使用しても、商品の品質の誤認を生ずる虞はなくなったと認められる。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「ブイセブン」は、商品の形式、規格等を表示するための記号、符号としての「V7」を想起するものではないから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とは言いがたく、自他商品の識別機能を有する、と判断された事例
(不服2013-12278、平成25年10月23日審決、審決公報第168号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「ブイセブン」の片仮名を標準文字で表してなり、第5類「薬剤(農薬にあたるものを除く。),医療用油紙,衛生マスク,オブラート等々」を指定商品として、平成24年8月10日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は『ブイセブン』の文字を普通に用いられる方法で表示してなる処、これは商品の形式・規格等を表示する記号・符号として一般に採択されている欧文字1文字と数字1文字とを組み合わせた『V7』を直観させるものであるから、これをその指定商品について使用しても、これに接する者は、前記商品の記号、符号を表す欧文字及び数字の組み合わせよりなる類型の一種であると認識、把握するに止まるというのが相当であり、極めて尚早で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認める。従って、本願商標は商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を根絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は「ブイセブン」の片仮名を標準文字であらわしてなるものであるから、その構成上、直ちに極めて簡単で、かつ、ありふれた商標であるということはできない。そして、職権調査によれば、本願の指定商品を取り扱う業界において、欧文字と数字とを組み合わせた文字をもって、商品の形式、規格等を表示するための記号、符号として、取引上普通に使用されている実情があるとまでは認められなかった。 そうすると、本願商標は上記記号、符号としての「V7」を想起するものとはいうことができない。 してみると、本願商標は極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とは言いがたく、自他商品の識別機能を十分に果たすものである。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |