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A. 商標「太陽光発電診断士」は、これと同一又は類似する名称の国家資格の存在や国家資格を想起させる事情及びこれと同一又は類似する名称が法令によって使用を規制されている事実が見出せなかったから、国家資格を表す名称の一つであるかの如く誤認する虞はなく、国家資格に対する社会的信頼を失わせる虞もない、と判断された事例 (不服2013-10696、平成26年1月17日審決、審決公報第171号)
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1 本願商標 |
本願商標は「太陽光発電診断士」の文字を標準文字で表してなり、第41類「資格検定試験の企画・運営又は実施、技芸・スポーツ又は知識の教授等」を指定役務として、平成24年5月29日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は『太陽電池等を使って、太陽光を直接に電力に変換する発電方式』を意味する『太陽光発電』の文字と、『物事の欠陥の有無を調べて判断すること』を意味する『診断』の文字と、『一定の資格・役割を持った者』を意味する『士』の文字とを、一連に『太陽光発電診断士』と標準文字で表してなるから、構成文字全体より『太陽電池等を使って、太陽光を直接に電力に変換する発電方式に関して欠陥の有無を調べて判断する有資格者』程の意味合いを理解、認識させるものである。また、新聞記事情報等によれば、太陽光発電協会や経済産業省が、太陽光発電装置の設置工事技術等のガイドライン作りや資格の認定制度の創設等、人材育成強化の準備を進めている実情が認められる。よって、本願商標をその指定役務に使用した場合には、恰も『太陽光発電診断士』という国家資格が存在し、これを表示するものと需要者が誤認を生ずる虞のあるものであるから、これを登録し使用することは、国家資格等の制度に対する社会的信頼を失わせ、ひいては商取引の秩序を乱す虞があると認められる。従って、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は「太陽光発電診断士」の文字を標準文字で表してなる処、本願商標の構成中の「士」の文字は「一定の資格・役割を待った者」を意味する語であって、例えば、末尾に「士」の文字を有する語は、一定の国家資格或いは民間資格を待った者又はそれらの資格自体を表すものとして理解される場合があるといえるものである。
しかしながら、当審において、職権により調査したところによれば、本願商標と同一又は類似する名称の国家資格の存在や国家資格を想起させる事情及び本願商標と同一又は類似する名称が法令によって使用を規制されている事実は見出せなかった。 そうとすれば、本願商標をその指定役務について使用しても、これに接する需要者が、本願商標を直ちに国家資格を表す名称の一つであるかの如く誤認する虞があるとは言えず、また、本願商標が国家資格に対する社会的信頼を失わせる虞があるとも認め難い。 従って、本願商標は社会公共の利益に反さず、公の秩序又は善良の風俗を害する虞もないから、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
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1 本願商標 |
本願商標は別掲の構成からなり、第15類「調律機、楽器、演奏補助品、音さ」を指定商品として、平成24年5月2日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は語頭『S』及び語尾『a』が多少図案化されているとしても、中間に位置する『u』及び『d』が普通の態様で表示されているから、全体として、『Suda』のローマ字を普通に用いられる方法の域を脱しない態様で表示するものである。そして、日常の商取引において、姓氏をローマ字で表す場合も決して少なくないことよりすれば、本願商標に接する取引者、需要者は、これを氏の『須田』をローマ字で表したものと容易に認識するというのが相当であり、また、『須田』の氏は、我が国において、ありふれた氏と認められるものである。してみれば、本願商標はありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と言わざるを得ない。従って、本願商標は商標法第3条第1項第4号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は別掲の通り、「Suda」の文字をアレグロスクリプト風の書体で表し、更に「a」の文字の書き終わり部分に該文字の上部に向かって円を描くような曲線を配した、極めて特異な態様で表されているといえる。
してみれば、本願商標はありふれた氏「須田」に通じる「Suda」の欧文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず、その特異に表示された外観上の特徴を有する構成態様をもって、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たすものというのが相当である。 従って、本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り、審決する。 |