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 商標「浅間山」は、「長野・群馬両県にまたがる三重式の活火山。」を指称する観光の名所として広く知られ、当地において商品「地ビールやミネラルウォーター」が生産・販売されている実情があることからすれば、単に商品の産地・販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり、商標法第3条第1項第3号に該当する、と判断された事例
(不服2013-8335、平成25年10月23日審決、審決公報第176号)
 
1 本願商標
 本願商標は「浅間山」の文字を標準文字により表してなり、第32類「ビール、清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース、ビール製造用ホップエキス、乳清飲料」を指定商品として、平成24年4月24日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は『浅間山』の文字を標準文字で表してなる処、『浅間山』とは長野・群馬両県にまたがる三重式の活火山で、上信越高原国立公園にも指定され、登山はもとより観光地としても広く知られている名峰の一つであるから、これをその指定商品について使用しても、本願商標に接する取引者、需要者は該商品が『浅間山周辺地域で製造、販売された商品』であると認識するに止まり、単に商品の産地、販売地、品質を表示するに過ぎないものであると認められるので、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は「浅間山」の文字を標準文字により表してなる処、該文字は「長野・群馬両県にまたがる三重式の活火山。」を指称するもの(広辞苑第6版)である。そして、当該活火山は複数の登山道を有し、その麓には観光地が点在し、次のように「浅間山」が観光の名所として広く紹介されている。
 「浅間山」南麓の長野県側に位置する「軽井沢」においては、軽井沢観光協会公式ホーム・ページに、「軽井沢を知る」の項で「浅間山の自然」として「浅間山」が紹介され、また、群馬県側に位置する「妻恋村」のウェブサイトには、「妻恋村の観光」の項で「花だより・花図鑑、浅間山周辺」として「浅間山」の周辺における花が紹介され、更に登山道を有する長野県小諸市のウェブサイトにおいては、「小諸市観光案内」の「主な観光地のご紹介」として、一番上に「浅間山」が紹介されている。そして、小諸市のウェブサイトには、小諸市が作成した観光パンフレットが複数掲載されており、それらの中に「浅間山」の地域に特化した「上信越高原国立公園浅間連峰浅間山登山」のパンフレットが存在する等、「浅間山」が各地域の観光のシンボルとして利用されている実情がある。
 ところで、観光地では、各種土産物や特産品が販売されている処、本願指定商品との関係においても地域の特性を生かした「地ビール」や「ミネラルウォーター」等の販売が一般的に行われており、上記「浅間山」の周辺地域においても、地ビールやミネラルウォーターが生産・販売されていることが認められる。
 そうすると、本願商標はこれをその指定商品に使用するときは、「長野・群馬両県にまたがる活火山である浅間山の地域」で生産又は販売されているものであることを認識させるとみるのが相当であり、単に商品の産地・販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
 請求人は、「浅間山」の文字を名称とする山が日本において多数存在していること、また、本願の指定商品の分野においても、現存する山の名称を標章とする登録商標が多数存在していることからすれば、山の名称を使用したとしても、それが直ちに商品の産地、販売地として認識されるというものではなく、「浅間山」を本願の指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は殊更に「長野・群馬両県にまたがる三重式の活火山で、上信越高原国立公園にも指定され、登山はもとより観光地としても広く知られている名峰」を特定し得るというべきでなく、地理的名称として指定商品の産地を表しているものとは理解しがたいものである。また、請求人は第33類「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒」において「浅間山」の商標を登録しており、本願の指定商品「ビール」と類似する商品を含むこの登録商標を約20年間使用しているという取引の実情が存在することからも、本願商標は自他商品識別標識としての機能を十分に備えている旨主張している。
 しかしながら、本願商標は上記の通り、「長野・群馬両県にまたがる活火山」であることを認識させるというのが相当であり、当該地域以外の「浅間山」が観光名所として利用されるなど、商品の産地・販売地として直ちに理解されるという事実を見出すことはできない。また、請求人が挙げた過去の登録例は、商標の具体的構成等において本願商標とは事案を異にするものであり、更に請求人の有する登録商標は、本願商標とは判断時期を異にし、長野・群馬両県にまたがる活火山である浅間山の周辺地域において、地ビールやミネラルウォーターが生産・販売されている実情があることからすれば、本願商標はこれらの登録例に左右されることなく、上記の通り判断するのが相当である。
 したがって、請求人の主張は採用することができない。
 以上の通り、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '15/07/14