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商標「ニュートンcap」は、「ニュートン」に通ずる「NEWTON」がイギリスの「NEWTON EQUIPMENT LTD」社により商品「2輪・4輪自動車用のガソリンタンクのキャップ」について使用されて著名な商標であるとしても、例えば、自動車の範囲を超えた需要者の間にまで広く認識されているとはいい難く、上記商品と本願の指定商品中に含まれる「プラスチック製の栓やふた」とは、生産者、販売者、購買者、取扱系統、用途及び原材料等を異にする商品であるから、上記イギリス法人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く商品の出所について混同を生じさせる虞はない、と判断された事例
(不服2013-24777、平成26年9月10日審決、審決公報第178号)
 
1 本願商標
 本願商標は「ニュートンcap」の文字を標準文字で表してなり、第20類に属する願書に記載の商品を指定商品として、平成24年3月2日に登録出願、その後、指定商品については、原審における同年9月26日付手続補正書により、第20類「飲食物用・医薬品用・化粧品用のプラスチック製の包装用容器、飲食物用・医薬品用・化粧品用のプラスチック製栓、飲食物用・医薬品用・化粧品用のプラスチック製ふた」と補正されたものである。

2 原査定の理由
 原査定は、「本願商標はイギリスのアルミタンク、フェールキャップなどを製造販売する専門メーカー『NEWTON EQUIPMENT LTD』が商品『2輪・4輪自動車用のガソリンタンクのキャップ』に使用する世界的に著名な商標『NEWTON』に通ずる『ニュートンcap』の文字よりなるものであるから、これをその指定商品に使用した場合、取引者・需要者は該商品が『NEWTON EQUIPMENT LTD』又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずる虞があるものであるから、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、これを拒絶した。

3 当審の判断
 本願商標は前記1の通り、「ニュートンcap」の文字からなり、第20類「飲食物用・医薬品用・化粧品用のプラスチック製の包装用容器、飲食物用・医薬品用・化粧品用のプラスチック製栓、飲食物用・医薬品用・化粧品用のプラスチック製ふた」を指定商品とするものであるところ、その構成中の「cap」の部分は「ふた」の意味を有する英語であることから、その指定商品中の「栓」、「ふた」との関係においては、商品の品質、用途を表示するものといえるから、本願商標は「ニュートン」の文字部分を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるものといえる。
 しかしながら、「ニュートン」と同じ読みである「NEWTON」の文字が、「NEWTON EQUIPMENT LTD」により、商品「2輪・4輪自動車用のガソリンタンクの金属製キャップ」の商標として使用され、ある程度知られているとしても、その使用に係る商品は、用途及び需要者が限定されたものであって、例えば、自動車の範囲を超えた需要者の間に広く認識されているものとはいい難い。
 そして、本願商標の指定商品中に「栓」や「ふた」が含まれているとしても、これらは飲食物用・医薬品用・化粧品用のプラスチック製のものであって、2輪・4輪自動車用のガソリンタンクの金属製キャップとは、その生産者、販売者、購買者、取扱い系統、用途及び原材料等を異にする商品である。
 そうとすると、近年の企業の多角経営の実情を考慮したとしても、前記の「NEWTON」の周知性の程度及び商品間の関連性を併せて考慮すると、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が当該「NEWTON」を連想又は想起するとは言えず、その商品が前記会社又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く商品の出所について混同を生じさせる虞はないと判断するのが相当である。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所
最終更新日 '15/10/20