最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「ザ・B級品」は、指定商品との関係において、商品の品質等表示として認識し難く、取引上一般に使用されている事実は発見できないし、取引者、需要者が、当該文字を商品の品質等表示として認識すべき事情も発見できないから、自他商品の識別機能を果たし得る、と判断された事例
(不服2013-11219号、平成26年12月24日審決、審決公報第182号)
 
1 本願商標
 本願商標は「ザ・B級品」の文字を標準文字で表してなり、第21類「愛玩動物用排泄物処理剤」を指定商品として、平成23年11月14日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標の構成中『ザ』の文字は『普通名詞の前について同類のものの中で特に代表的、典型的なものとして強調する語』として特段の意味を有しない語であって、また、『B級』の文字は『Aクラスに次ぐ第2位の等級。』を意味する語であり、本願商標全体としては『第2位の等級の品』程の意味合いを有するから、本願商標を指定商品に使用するときは、単にその商品が『第2位の等級の品』であること、即ち、商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものといえる。従って、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は「ザ・B級品」の文字よりなる処、該文字は原審説示の意味合いを暗示させるとしても、指定商品との関係においては、商品の一定の品質を表示するものとして認識し、理解させるものということは困難である。
 また、当審において職権をもって調査するも、「ザ・B級品」の文字が、本願の指定商品の品質等を表示するものとして、取引上一般に使用されている事実は発見することができず、請求人の使用事例が認められたのみである。さらに本願の指定商品の取引者、需要者が、該文字を商品の品質等を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は指定商品に使用しても、商品の品質等を表示するものと認識されるとは言えず、自他商品の識別機能を果たし得るものである。
 従って、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない、
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 商標「junhashimoto」は、全ての文字が小文字で、かつ、スペース等も設けずに表され、いずれの文字をもって「氏」又は「名」を表したものか、直ちに把握させ難い等のため、ローマ字で表す「氏名」を普通に表示したものとは認識し得ないから、商標法第4条第1項第8号に該当しない、と判断された事例
(不服2014-16939号、平成27年1月8日審決、審決公報第182号)
 
1 本願商標
 本願商標は「junhashimoto」の文字を書してなり、第25類及び第35類に属する願書記載の通りの商品及び役務(その後、補正)を指定商品及び指定役務として、平成25年6月6日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は日本人男性の氏名をローマ字表記したものと容易に看取させる『junhashimoto』の文字を書してなる処、例えば、はいゆう『橋本じゅん』氏、作詞家『橋本淳』氏の他、『橋本淳』、『橋本順』氏等の人物が多数存在しており、かつ、これらの者の承諾を得たものとは認められない。従って、本願商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は「Junhashimoto」の欧文字を書してなる処、その構成文字は同書、同大で外観上纏り良く一体的に表され、これより生ずる「ジュンハシモト」の称呼も、一連に称呼できるものである。
 ところで、日本人の氏名の読みを、ローマ字で表記することは広く行われている処、その表し方は、氏と名の第1文字目をそれぞれ大文字で表し、また、その間にスペースを設けるなどの表示が一般的といえる。
 そうすると、本願商標は全ての文字が小文字で、かつ、スペースなども設けずに表されていることから、かかる構成においては、これに接する取引者、需要者にいずれの部分をもって「氏」又は「名」を表したものと、直ちに把握、認識させるとはいい難く、その構成全体をもって、一種の造語を表したものとみるのが自然である。
 そして、請求人が提出した資料によれば、本願商標はデザイナーである「橋本淳」氏がデザインする被服等の商品の出所を表示するブランドとして使用されており、該商品はデパート等で多数取り扱われている事実が認められ、一定程度の周知性を有するものというのが相当である。
 そうとすれば、本願商標は、取引者、需要者が通常、ローマ字で表す「氏名」を普通に表示したものとは認識し得ないものというべきである。
 従って、本願商標が商標法第4条第1項第8号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '15/10/23