最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「BIE/ビーアイイー」は、「博覧会国際事務局」を表示する標章であって、経済産業大臣が指定する標章「B.I.E.」と同一又は類似するから、商標法第4条第1項第3号に該当する、と判断された事例
(不服2013-17148号、平成26年12月26日審決、審決公報第184号)
 
1 本願商標
 本願商標は「BIE」の欧文字と「ビーアイイー」の片仮名を上下二段に横書きしてなり、第1類及び第5類に属する願書記載の通りの商品を指定商品として(後に補正)、平成24年10月26日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
 原査定において、「本願商標は国際機関である『博覧会国際事務局』を表示する標章であって、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似のものと認める。従って、本願商標は商標法第4条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は「BIE」の欧文字と「ビーアイイー」の片仮名を上下二段に横書きしてなる処、構成中「BIE」の文字部分は、商標法第4条第1項第3号の規定に基づき、経済産業大臣が「博覧会国際事務局の標章指定」(平成6年4月26日通商産業省告示第303号)として指定する標章の一である博覧会国際事務局を表示する標章「B.I.E」と「.」の有無の差を有するに過ぎず、その構成文字を同じくするものである。
 また、本願商標の構成中「ビーアイイー」の片仮名部分は「BIE」の読みを特定表示しかものと認識し、理解させるに過ぎない。
 してみれば、本願商標は経済産業大臣が指定する前記標章と類似の商標と言わざるを得ない。
 従って、本願商標は商標法第4条第1項第3号に該当し、登録できない。
 尚、請求人は過去の登録例を挙げ本願商標も登録されるべき旨主張する。しかしながら、請求人の挙げた事例は本件の審理に係る商標とは構成を異にする商標に係る事例であって、本件の審理に適切ではない。
 また、請求人は、商標法第4条第1項第3号の立法趣旨は公益保護の観点から国際機関の尊厳の保護を図るものである処、本願商標と引用標章が示す「博覧会国際事務局」とは特に密接な関連性を有しないため、本願商標に接する需要者又は取引者が「博覧会国際事務局」を想起する可能性は極めて低いものであり、国際機関である「博覧会国際事務局」の尊厳は遵守される旨主張する。しかしながら、商標法第4条第1項第3号の判断に際しては、本願商標と引用標章との類否を検討すれば足りるから、この点に関する請求人の主張も採用できない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「タントロ」は、「脂が乗った、料理用の牛・豚などの舌」の意を暗示させる場合があるとしても、指定商品の特定の品質を表示するものとして認識理解させるものということは困難であり、そのような品質等表示として、取引上一般に使用されている事実も発見できなかったから、商品の品質等を表示するものとして認識されるとは言えず、自他商品の識別機能を有する、と判断された事例
(不服2014-17484号、平成27年3月5日審決、審決公報第184号)
 
1 本願商標
 本願商標は「タントロ」の文字を標準文字で表してなり、第29類「刺身用の豚・牛の舌を原材料とする生ハム、すしダネ用の豚・牛の舌を原材料とする生ハム、カルパッチョ用の豚・牛の舌を原材料とする生ハム、焼肉用の豚・牛の舌を原材料とする生ハム、摘み物用の豚・牛の舌を原材料とする生ハム、その他の豚・牛の舌を原材料とする生ハム」を指定商品として、平成25年7月17日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
 原査定は、「本願商標は『タントロ』の文字を普通に用いられる方法で表示してなる処、『タン』の文字は『料理用の牛・豚などの舌』を意味するものであり、『トロ』の文字は『マクロの腹側の脂肪に富んだ部分』を意味するものであるが、昨今、『豚トロ』『牛トロ』のように『脂肪が乗っか肉』を表すものとして使用され、『タントロ』の文字が『霜降りの=脂が乗った、牛タン』を表すものとして使用されていることから、本願商標はそれぞれの文字より全体として『脂が乗った、料理用の牛・豚などの舌』であることを理解させ、これをその指定商品に使用しても、単に商品の品質、原材料を表すに過ぎないものである。従って、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は上記1の通り、「タントロ」の文字よりなる処、該文字は原審説示の意味合いを暗示させる場合があるとしても、指定商品の特定の品質を表示するものとして認識し、理解させるものということは困難である。
 また、当審において職権をもって調査するも、「タントロ」の文字が本願の指定商品の品質等を表示するものとして、取引上一般に使用されている事実を発見することができなかった。
 そうとすると、本願商標はその指定商品に使用しても、商品の品質等を表示するものと認識されるとは言えず、自他商品の識別機能を果たし得る。
 従って、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '16/03/22