最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「my」は、「私の」の意味を有する一般に親しまれた英単語として認識されるものであり、商品の品番、型式等を表示するための記号、符号として、取引者、需要者に認識されるとはいい難いから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とは言えない、と判断された事例
(不服2014-18212号、平成27年3月23日審決、審決公報第185号)
 
1 本願商標
 本願商標は「my」の欧文字を標準文字で表してなり、第9類に属する願書記載の通りの商品を指定商品として、平成25年10月22日に登録出願されたものであり、その後、指定商品については、補正されている。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は商品の品番、等級等の記号、符号として類型的に使用されているローマ字2字に相当する『my』を標準文字で表してなるから、これを指定商品に使用しても、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標に過ぎないものと認める。従って、本願商標は商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は上記1の通り、「my」の欧文字を標準文字で表してなる処、我国における英語の普及程度からすれば、「私の」の意味を有する一般に親しまれた英単語として認識されるものであるといえる。
 そうすると、本願商標は欧文字2文字からなるものであるが、これが商品の品番、型式等を表示するための記号、符号を表したものとして、取引者、需要者に認識されるとはいい難いものである。
 従って、本願商標は極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とはいえないから、商標法第3条第1項第5号に該当するものではない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「パリコレ」は、パリコレクションの主催者と本願指定商品「菓子及びパン」に関わる事業者についてみると、業種が明らかに異なり、役務と商品間の関連性は見出せず、パリコレクションの主催者が本願指定商品の製造、販売を行っている事実も見出せないから、上記指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者がパリコレクションの主催者又は同主催者と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤信する虞はないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない、と判断された事例
(不服2014-24375号、平成27年3月17日審決、審決公報第185号)
 
1 本願商標
 本願商標は「パリコレ」の文字を標準文字で表し、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、平成25年10月22日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)
 原査定は、「本願商標は『パリコレ』の文字を標準文字で表してなるが、該文字はフランスのオートクチュール・プレタポルテ連合協会主催の『1年に2回、フランスのパリで開かれるファッション・ショー』である『パリコレクション』を容易に認識させるものであるから、出願人が本願商標をその指定商品『菓子及びパン』に使用するときは、これが恰も前記連合協会又は同連合協会と組織的、経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く誤信し、商品の出所について混同を生ずる虞があると認める。従って、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は「パリコレ」の文字よりなり、第30類「菓子及びパン」を指定商品とするものである。
 ところで、「パリコレ」の文字は「1年に2回、フランスのパリで開かれるファッションショー」である「パリコレクション」の略称として、我国において、広く知られているものといえる。
 そして、「ファッションショー」とは、「新しい型の服装を発表するためにモデルに着せて見せる催し」を意味する処、該催しは主に服装に関連する事業者、団体等が主催或いは参加することが一般的であり、「パリコレクション」についても、フランスのファッション業界の団体である「フランス・オートクチュール・プレタポルテ連合協会」が主催しているものである。
 そこで、パリコレクションの主催者と本願指定商品に関わる事業者についてみると、業種が明らかに異なり、役務と商品間の関連性は見出せない。
 さらに、パリコレクションの主催者が本願指定商品の製造、販売を行っている事実も見出せない。
 そうとすると、「パリコレ」の文字からなる本願商標を指定商品「菓子及びパン」に使用しても、これに接する取引者、需要者がパリコレクションの主催者又は同主催者と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤信することはないといえるから、本願商標は他人の業務に係る商品と混同を生ずる虞はないものと判断するのが相当である。
 従って、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当しないから、これを理由として本願を拒絶した原査定は取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '16/09/23