最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「日本維新の会」は、我国の政党「日本維新の会」が一般に広く知られているため、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章であって、著名なものと同一又は類似するから、商標法第4条第1項第6号に該当する、と判断された事例 (不服2012-18707号、平成26年2月25日審決、審決公報第186号)
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1 本願商標 |
本願商標は「日本維新の会」の文字を標準文字で表してなり、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、教育研修のための施設の提供、電子出版物の提供、書籍の製作」等を指定役務として、平成23年12月16日に登録出願されたものである。
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2 当審において通知した拒絶の理由 |
当審において、請求人に対し、本願商標は商標法第4条第1項第6号に該当するとして通知した拒絶理由の詳細は審決の別掲の通りである。
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3 当審の判断 |
(1)商標法第4条第1項第6号によれば、「・・・公益に関する団体であって営利を目的としないもの…を表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」は商標登録を受けることはできないとされている。
(2)本願商標は「日本維新の会」の文字を標準文字で表してなるものである。 そして、総務省報道資料「政党助成法に基づく政党の届出の概要」における記載によれば、日本維新の会は大阪市中央区に主たる事務所を置き、国会議員62人が所属する我国の政党であることが認められる。 また、日本維新の会は平成24年9月の発足後に行われた衆議院選挙における比例代表選挙で、自由民主党に次ぐ約1226万票を獲得したことからすれば、日本維新の会は我国の政党として、一般に広く知られているものと認められる。 してみると、標章「日本維新の会」は公益に関する団体であって、営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものといえる。 そして、本願商標は「日本維新の会」の文字からなるものであるから、前記著名な標章「日本維新の会」と同一又は類似の商標である。 したがって、本願商標は公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章であって、著名なものと同一又は類似の商標と言わなければならず、商標法第4条第1項第6号に該当する。 (3)請求人の主張について−省略 (4)むすび したがって、本願商標は商標法第4条第1項第6号に該当するものであるから、これを登録することはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
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1 本願商標 |
本願商標は別掲1の構成からなり、第9類、第35類及び第42類の商品及び役務を指定商品及び指定役務として平成25年2月8日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は赤の色彩を施した図形中に白抜きの十字を表した図形を有してなる処、該図形はパリ条約の同盟国のスイス連邦の紋章であって、経済産業大臣が指定するもの(スイス国紋章)と外観上類似するから、商標法第4条第1項第2号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は「SECURITY」の青色の欧文字を横書し、その右下に「セキュリティ・プラス」の灰色の片仮名を横書し、その右に近接して朱色で彩色した背景図形に白抜き図形が配された構成からなる処、構成中の「SECURITY」及び「セキュリティ・プラス」の文字はいずれもゴシック体の同じ書体で表されてなり、かつ、「プラス」の文字を「+」記号で表示することは一般に行われていることから、本願商標の構成中、図形部分における白抜き図形は、「プラス」の文字を「+」記号により表したものと看取される。
そして、構成中「SECURITY」の欧文字は「防護、警備」の意味を有する広く親しまれた英語であって、本願の指定商品・役務中の電子計算機用プログラム又はこれに係る商品・役務との関係においては、コンピュータを不正利用などから防護することを意味する語として、広く使用されている。また、「プラス」の文字及び「+」記号は本願の指定商品及び指定役務の分野に止まらず、各種の分野において、「加えること。足すこと。」の意味を表すものとして使用されているから、本願商標は構成全体として「セキュリティを付加する」程度の意味を理解させる。 そうすると、本願商標は構成中の図形部分のみが独立して自他商品・役務の識別標識として機能するものとは言えず、図形部分は片仮名部分の態様と相侯って「SECURITY」の文字と一体のものとして把握され、認識されるものである。 してみれば、本願商標は構成中の図形部分が単独でスイス国紋章を表したものと認識されるものではなく、欧文字部分と一体不可分のものとして理解されるというべきであるから、スイス国紋章と同一又は類似の商標に該当するものとは言えない。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第2号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消を免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |