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A. 「スナック菓子、せんべい」及び「スナック菓子・せんべいの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と「サンドイッチ」とは非類似商品・役務であるため、商標「幸せBOX」と引用商標「しあわせBOX」は商標法第4条第1項第11号に該当しない、と判断された事例
(不服2015-8262号、平成27年9月10日審決、審決公報第190号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「幸せBOX」の文字を標準文字で表してなり、第30類「スナック菓子、せんべい」及び第35類「スナック菓子・せんべいの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成26年4月22日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、本願商標「幸せBOX」に係る指定商品及び指定役務中の「スナック菓子、せんべい」及び「スナック菓子・せんべいの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(以下、「スナック菓子・せんべいの小売等役務」という。)と引用商標「しあわせBOX」に係る指定商品中の「サンドイッチ」とが類似するものである旨認定、判断し、商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
「サンドイッチ」と「スナック菓子、せんべい」の取引の実情を見るに、前者は、主にチルド食品として販売され、主食であり、「スナック菓子、せんべい」は、常温で保存でき、携帯が容易であり、主におやつであり、食品の点で共通するものの、その種類、性質において関連性がなく、用途においても少なからず相違する。
また、原材料について、「サンドイッチ」と「スナック菓子、せんべい」の主たる原材料に共通性もない。 さらに、商品の生産過程について、「サンドイッチ」は、パン製造業者等、「スナック菓子、せんべい」は、菓子専門の製造業者による生産が主であり、販売過程では、前者はパン及びサンドイッチ専門の製造業者の直営店での製造小売、各種小売店・テイクアウト方式の喫茶店等の飲食店のパン類売り場等での販売、後者は、菓子の製造業者の直営店での製造小売、各種小売店のスナック菓子等の売り場での販売であり共通性がない。 加えて、需要者の範囲について、飲食料品の需要者は、一部を除き、全て共通性を否定できず、商品の類否判断においてこれのみを重視することは適切でなく、また、両商品を求める需要者は、商品購入の目的が異なる。 よって、生産部門、販売部門、原材料及び用途等が異なることからみて、その出所について混同を生じるおそれはない、非類似の商品である。 また、「スナック菓子・せんべいの小売等役務」と「サンドイッチ」との類否についても、上記と同様であり、製造、販売とが、同一事業者により行われることが一般的でなく、その用途、提供場所と販売場所も、一致しない。さらに、需要者の範囲が一致するかについても、前記と同様である。 よって「スナック菓子・せんべいの小売等役務」と「サンドイッチ」とは、その商品の製造及び販売と役務の提供を行う事業者、用途、商品の販売場所と役務の提供場所等からみて、別異のものであり、互いに非類似の商品及び役務である。 以上からすれば、本願商標は、引用商標と類似の商標ではあるが、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品及び役務について使用をするものではないから、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
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1 本願商標 |
本願商標は、別掲1の構成からなり、第9類、第35類、第36類、第42類及び第43類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成25年11月1日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、水色の肉太の頂点が丸みを帯びた三角形よりなるところ、これは極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるものであり、三角形、正方形、円形等の図形は、標章の輪郭を表すためのものとして、普通に採択使用されている実情がある。そうとすると、本願商標は、三角形の輪郭としての形象を脱し得ず、いまだ普通に用いられる方法で表示されたものといわざるを得ない。してみれば、本願商標は、特殊な態様からなるものとはいうことができず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標に係る図形を全体としてみるに、太い線で表されている三角形は、その3つの角が、いずれも外側よりも、内側の角が鋭角になるように表されており、外側の角が丸みを帯びていることにより、バランス良く安定した印象を与える一種特有な図形よりなるものとみるのが相当である。また、職権調査によっても、当該図形が輪郭等として普通に採択、使用されている事実も見出せない。そうとすると、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務について使用しても、自他商品及び役務の識別標識としての機能を果たし得るものと認められる。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとした原査定は、妥当でなく、取消を免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |