最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 本願商標「進撃の阪神」は、商標法第4条第1項第15号には該当しない、と判断された事例
(不服2015-16109号、平成28年2月10日審決、審決公報第196号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「進撃の阪神」の文字を標準文字で表してなり、第9類「録音済み及び録画済みのコンパクトディスク・DVDその他の記録媒体」、第16類「印刷物」、第38類「インターネットによる音声又は映像を送る放送,報道する者に対するニュースの供給」及び第41類「コンサートの企画・運営又は開催」を指定商品及び指定役務として、平成26年4月15日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、『進撃の阪神』の文字からなるところ、これは各種の商品、役務を提供している阪神グループの使用に係る著名な商標『阪神』と同一の文字を含むものであるから、これを出願人が本願商標の指定商品及び指定役務に使用するときは、あたかもこれが阪神グループの業務に係り、あるいは何等かの関係があるかの如く、商品及び役務の出所について誤認を生じさせるおそれがあるものである。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は、「進撃の阪神」の文字からなるところ、その構成文字は同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で外観上まとまりよく一体的に表されているものであり、これより生じる「シンゲキノハンシン」の称呼も格別冗長というべきものではなく、無理なく一連に称呼できるものであって、構成文字全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるとみるのが自然である。
そして、本願商標の構成中、「進撃」の文字が「進んで行って攻撃すること。」等の意味を有する語であり、「阪神」の文字が「大阪と神戸。」等の意味を有する関西地方の一地域名を表す語であって、その両語を助詞「の」で結合した「進撃の阪神」の文字からは、特定の意味合いを想起させない一種の造語として認識され、本願商標は、特定の観念を生じない。 また、本願商標は、その指定商品及び指定役務との関係においても、「阪神」の文字部分のみが着目され、特定の出所が認識されるとみるべき特段の事情は見いだせない。 してみれば、本願商標は、全体として、一種の造語として認識し、理解されるものであるから、本願の指定商品及び指定役務に使用しても、原審説示の如く、阪神グループと関係のある者の業務に係る商品及び役務であるかのごとく、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。 したがって、本願商標が、商標法第4条第1項第15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取り消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 本願商標「PLUS」と「プラス」の二段書きは、商標法第3条第1項第6号には該当しないと判断された事例
(不服2015-13714号、平成28年3月16日審決、審決公報第196号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「PLUS」の欧文字と「プラス」の片仮名を2段に横書きしてなり、第32類「ビール,飲料水,香りを付けた飲料水,ミネラルウォーター,炭酸水,エネルギー補給用の清涼飲料(医療用のものを除く。),スポーツ用の清涼飲料」他を指定商品として、平成26年3月25日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要旨 |
原査定は、「『PLUS』、『プラス』とは『加えること。足すこと。』を意味する語として日常的に親しまれており、『成分』等を加えるの意味で他の用語に付して、商品の成分、内容等を表す語として普通に使用されている事実があり、食品業界においても、何らかの『成分』等をプラスした商品であることを表す語として普通に使用されているものであるから、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は、出願人の取り扱い商品に関し、何らかの『成分』等をプラスした商品であることを認識するにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標の構成中の「PLUS」は、「1加号,正符号。2正量,正数。3プラスのもの,有利な特質,利益」等の意味、また、「プラス」は、「1加えること。足すこと。2加号または正の数の符号。すなわち「+」。3陰・陽に分けられるものの、陽の方。4ある性質を持つこと。陽性。5利益。黒字。6有利なこと。よいこと。」の意味を有することが認められる。
そして、本願商標は「PLUS」及び「プラス」の文字のみで構成されることを踏まえると、直ちにその中の特定の意味合いを認識するとすべき事情は見いだし得ない。 原査定は、本願商標は「何らかの成分等を加えた商品であること」を認識させるにとどまるとしているところ、該語の意味の中には「加えること、足すこと」との意味も含まれてはいるが、「PLUS」及び「プラス」の語のみでは漠然とかかる意味合いが理解されるだけで、何が足されるのかや何に加えられるのか等については明かでない。 また、職権により調査するも、指定商品を扱う分野において、他の単語と連結して使用している例は発見できても、「PLUS」又は「プラス」のみで、原審説示の如き意味合いを表示するものとして、普通に使用されている事実を発見することはできなかった。 そうすると、本願商標を構成する「PLUS」又は「プラス」の文字だけでは、各語が有する意味を理解するとしても、その意味合いは漠然として具体性に欠けるといわざるを得ず、原審説示のように「何らかの『成分』等をプラスした商品であることを認識し、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない」ということはできない。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。 その他、政令の定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |