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A. 本願商標(別掲1)と引用商標「COLO COLO」及び「コロコロ/ころころ」は、商標法第4条第1項第11号には該当しない、と判断された事例
(不服2015-22886号、平成28年3月15日審決、審決公報第197号)
別掲1
(本願商標)



※色彩は原本を参照
 
1 本願商標
 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第30類「福岡県で生産又は販売される菓子」を指定商品として、平成26年11月13日に登録出願されたものである。

2 引用商標
 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、「COLO COLO」を横書きしてなる登録第1759944号商標、「コロコロ」の片仮名を上段に、「ころころ」の平仮名を下段に、2段書きしてなる登録第4324862号商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
 なお、これらをまとめて、以下「引用商標」という。


3 当審の判断
 本願商標は、別掲のとおり、上段に「HAKATA」の欧文字を書し、その下に、左から、C状の半円弧図形、商品の写真と思しき図形、「R」の欧文字、及び正円図形を横一列に配し、さらにその下段に、左から、C状の半円弧図形、正円図形、「R」の欧文字、及び商品の写真と思しき図形を横一連に配した構成からなるところ、「HAKATA」の文字は、「博多」の表音表記と認められ、商品の産地、販売地を認識させるものであるから、自他商品の識別標識としての機能を有さないものであり、該文字をもって取引に資されることはない。
 また、上記図形部分においては、C状の半円弧図形と正円図形が、欧文字の「C」と「O」を表したものであるとしても、商品の写真と思しき図形については、欧文字「O」の特徴である「中央の円」を持ち合わせておらず、さらに、円を表す外周が歪んでいることもあり、容易に、欧文字の「O」を表したものと認識するとはいい難く、他に、これが欧文字の「O」であるとみるべき事情はみいだせない。
 そうとすると、本願商標は、「CORO」と「CORO」とを2段書きしたものということはできないから、これより出所識別標識としての特定の称呼及び観念は生じないとみるのが相当である。
 したがって、本願商標より、「コロコロ」の称呼及び「転がりそうに丸みがあるさま。」の観念が生じるとし、その上で、本願商標と引用商標とが類似するものとして、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「香洛園」と引用商標(別掲1)は、商標法第4条第1項第11号には該当しない、と判断された事例
(不服2015-21659号、平成28年3月24日審決、審決公報第197号)
別掲1
(引用商標)



※色彩は原本を参照
 
1 本願商標
 本願商標は、「香洛園」の文字を横書きしてなり、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、平成27年2月26日に登録出願されたものである。

2 引用商標
 原査定において、本願商標が、商標法第4条第1項第11号に該当するとして、拒絶の理由に引用した登録第5496313号商標は、別掲のとおりの構成からなり、平成23年12月8日に登録出願、第30類「穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ」他及び第43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同24年5月25日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「香洛園」の文字を筆書き風の書体で表してなるものであるところ、これは、一般に親しまれた意味を有する成語ということはできないことから、一種の造語として理解されるものである。
 そうすると、本願商標は、その構成文字に相応して「コウラクエン」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。
 他方、引用商標は、別掲のとおり、赤色の球形図を、11個のブロックに分割した図形(分割の境界は全体として「幸」の字の様な構成)を上段に顕著に表し、その下段に、「KOURAKUEN」の欧文字を黒色で書してなるものである。
 そして、上段の図形部分は、たとえ球形図を分割した境界が、「幸」の字の様な構成であるとしても、全体として、特定の称呼及び観念を生じない図形とみるのが相当であるから、これより、特定の称呼及び観念は生じないというのが相当である。
 また、下段の「KOURAKUEN」の欧文字部分は、「東京都文京区にある、もと水戸家上屋敷内の庭園。」、「岡山市にある公園。日本三名園の一つ。」又は「東京メトロの丸ノ内線及び南北線の駅名」である「後楽園」の表音表記と容易に想起されるものというのが相当であり、引用商標の指定役務との関係においては、役務の提供場所を複数認識させるにとどまるものであるから、自他役務の識別標識としての機能を有さないものといえる。そうすると、ことさら該文字に着目して、これから生じる称呼のみをもって取引に当たるとはいえないから、引用商標からは、「コウラクエン」の称呼は生じないというのが相当である。
 したがって、引用商標より「コウラクエン」の称呼を生じるとし、そのうえで本願商標と引用商標とが称呼上類似するものであるから、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。  その他,本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '17/04/24