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A. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第3号及び同項第4号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-945号、平成28年4月20日審決、審決公報第198号)
別掲
(本願商標)


 
1 本願商標
 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第12類「自動車用ドアトリム,自動車用ボディーサイドトリム,自動車用サンバイザ,自動車用トランクトリム,自動車用ピラートリム,自動車用ルーフトリム,自動車用トノカバー,自動車用トノボード,自動車用シート,自動車への出入り及び自動車走行時の乗員の身体支持のための自動車用アシストグリップ,荷物エリアの自動車用ラゲージトリム,自動車用インスツルメンツパネル,自動車用コンソールボックス,自動車用にプレカットされ特定の形状に成形された騒音並びに振動減衰用自動車インシュレータ,自動車用リヤパーセルシェルフ,自動車のドアフレーム下部用のキックプレート」を指定商品として、平成27年3月19日に登録出願されたものである。

2 原査定における拒絶の理由の要旨
 原査定は、以下の(1)ないし(3)のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。
(1)本願商標は、兵庫県南部の地名である「加西」又は、東京都江戸川区南部の地名である「葛西」を欧文字表記したものと看取させる「KaSaI」の文字を書してなるものであるから、商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示したものと認識するにすぎない。したがって、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)本願商標は、ありふれた氏である「葛西」、「笠井」又は「河西」を欧文字表記したものと看取させる「KaSaI」の文字を書してなるものであるから、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示したものと理解するというのが相当である。したがって、商標法第3条第1項第4号に該当する。
(3)本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。


3 当審の判断
 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、「KaSaI」の欧文字を元に図案化してなるものであるところ、その構成文字は、太く丸みを帯びた文字で若干右に傾斜した態様からなるものであって、大文字と小文字を同じ縦の長さをもって表し、それらを等間隔で外観上まとまりよく一体的に表されている点に特徴を有するものであるから、普通に用いられる方法を脱する程度にまで創造された特徴ある書体からなる商標として認識、理解されるというのが相当である。
 そうすると、これをその指定商品について使用しても、商品の産地、販売地やありふれた氏を普通に用いられる方法で表示したものとは認識し得ず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同項第4号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「バレンシアハート」は、商標法第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2015-21124号、平成28年4月18日審決、審決公報第198号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「バレンシアハート」の片仮名を標準文字で表してなり、第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」を指定商品として、平成26年11月7日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『バレンシアハート』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中にスペイン東部の都市『バレンシア』の文字を有してなるから、これをその指定商品中『スペインバレンシアで製造された菓子,スペインバレンシアで製造されたパン』等、スペインバレンシアで製造された商品以外の商品に使用する時は、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「バレンシアハート」の片仮名を標準文字で表してなるところ、その構成中「バレンシア」の文字については、地名事典に、「スペインの都市名」及び「ベネズエラの都市名。」との記載があるとしても、いずれも我が国において広く一般に知られているとはいい難い。
 また、当審において職権で調査するも、本願の指定商品との関係において、「バレンシア」の文字が、商品の産地や販売地を表示するものとして一般に使用されている事実や認識されていると認めるに足る事実は発見できなかった。
 そうすると、「バレンシア」の文字をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、該文字を商品の産地、販売地を表示したものと認識するものとはいい難い。
 してみると、本願商標は、その構成中に「バレンシア」の文字を有しているとしても、商品の品質の誤認を生じさせるおそれはないものといえる。
 したがって、本願商標が、商標法第4条第1項第16号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '17/04/24