最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標(別掲)は、商標法第4条第1項第11号及び第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2014-20157号、平成28年6月7日審決、審決公報第199号)
別掲
 
1 本願商標
 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、「被服,履物,運動用特殊靴,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,仮装用衣服,運動用特殊衣服」を指定商品として、平成25年5月1日に登録出願されたものである。

2 原査定における拒絶の理由の要旨
 原査定は、以下(1)及び(2)のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。
(1)本願商標は、その構成中にイタリア国を意味する「ITALY」の文字を有してなるものであるから、これを本願の指定商品中「イタリア製の商品」以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(2)本願商標は、登録第1910784号商標「MAGI\マギー」他(以下、「引用商標」という。)と「マギー」の称呼を共通にする類似の商標であって、その商標に係る指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。


3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第16号について
 本願商標を構成する各文字は狭い間隔をもって均等に配されており、また、語頭の「M」が文字の左端の縦線をやや長く伸ばし、先端を「J」の文字のようにやや外側に曲げた特徴を有し、これに続く「AGGIEITALY」の文字は語頭の「M」の文字よりやや小さく、各文字が一般的なゴシック調書体により同じ大きさで表されているものである。
 そうすると、本願商標は、視覚上、その構成全体として、まとまりよく一体的に看取され得るものであって、語頭の「M」をやや大きく特徴的に表した一単語として理解、認識されるものというのが相当である。
 そして、「MAGGIEITALY」の欧文字は、既成の語ではなく、特定の観念を生じない一種の造語といえるものであって、その構成文字全体から生じる「マギーイタリー」の自然な称呼も、冗長とはいえず、よどみなく一連に称呼し得るものである。
 そうすると、本願商標は、全体が一体不可分の商標と認識されるものというのが相当であり、かかる構成においては、その構成文字に含まれる「ITALY」の文字列に着目して、該文字列が本願の指定商品の産地・販売地を具体的に表示するものであると直ちに認識されるとはいい難い。
 してみれば、本願商標をその指定商品に使用しても、商品の品質の誤認を生じるおそれはないというのが相当であるから、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
 本願商標は、全体が一体不可分の商標と認識されるものというのが相当であり、これを構成する「MAGGIEITALY」の欧文字からは、「マギーイタリー」の称呼のみを生じるものである。
 してみれば、本願商標から「マギー」の称呼が生じ、本願商標と引用商標とが「マギー」の称呼を共通にすることを前提として、商標法第4条第1項第11号に該当するものとした原査定は妥当とはいえない。
(3)したがって、本願商標が商標法第4条第1項第11号及び16号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。




B. 本願商標(別掲)は、商標法第4条第1項第6号には該当しない、と判断された事例

(不服2016-3993号、平成28年6月21日審決、審決公報第199号)

別掲
 
1 本願商標
 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第9類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成26年10月20日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要旨
 本願商標は、その構成中に「unv」の文字を有してなるが、これは、国連開発計画(UNDP)の下部組織として1970年の国連総会決議によって創設された、ドイツ国ボン在の「国連ボランティア計画」(United Nations Volunteers)を表示する、本願の出願前より現在に至り著名な標章「UNV」とその外観及び称呼において類似する商標であるから、商標法第4条第1項第6号に該当し、また、本願商標は、上記「国連ボランティア計画」の著名な略称である「UNV」と類似する「unv」の文字を含むものであり、かつ、同機関の承諾を得ているものとは認められないから、同法第4条第1項第8号に該当する。

3 当審の判断
 本願商標は、別掲のとおり、「u」、「n」、「v」の各文字を、統一したデザインの字体により横書きにし、2文字目の「n」の直上には、前後の「u」及び「v」の両文字にまたがるように円弧の図形が配され、また、1文字目と3文字目の「u」及び「v」の文字を黒色で、中央の「n」の文字とその直上の円弧の図形部分を濃い灰色で表し、全体として文字部分と図形部分とがまとまりよく一体的に構成されている。
 次に、「国連ボランティア計画」の英語表記を構成する各語の頭文字「UNV」の文字について、当審において職権をもって調査するも、当該文字が上記公益的機関を表示するもの、あるいは同機関の略称として、本願商標の出願時及び査定時において、我が国において著名の程度に至っているものと認められる事実を見いだすことはできなかった。
 そうすると、「UNV」の文字が、公益的機関である国連ボランティア計画を表示するものとして、あるいは同機関の略称(標章)として著名なものとはいえないこと、さらに、本願商標は、文字部分と図形部分とがまとまりよく一体的に構成された態様よりなることを併せ考慮すれば、本願商標が、看者をして、直ちに「国連ボランティア計画」を表示するもの、あるいは同機関の略称を表示するものと想起させるものとはいい難い。
 してみれば、本願商標は、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章と同一又は類似の商標ということはできず、また、他人の著名な略称を含むものともいうことはできない。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号及び同項第8号に該当しない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


鈴木正次特許事務所

最終更新日 '17/05/07