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A. 本願商標「風景のある家」は、商標法第3条第1項第6号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-9212号、平成28年9月6日審決、審決公報第202号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「風景のある家」の文字を標準文字で表してなり、第42類「建築物の設計、測量、機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計、デザインの考案、電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守、建築又は都市計画に関する研究、公害の防止に関する試験又は研究、電気に関する試験又は研究、土木に関する試験又は研究、電子計算機の貸与、電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として、平成27年7月21日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、『風景のある家』の文字を標準文字で表してなるところ、インターネット情報によれば、建築物の設計等を行う業界において、『良い風景(景色)が見える家』等が『風景のある家』と称され、紹介されている。そうすると、本願商標をその指定役務中の『建築物の設計、測量、デザインの考案』に使用にも、需要者は顧客の吸引、販売促進等のためのキャッチフレーズを表示したものと理解するにとどまり、何人かの業務に係る役務であるかを認識することができない商標であるというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は、「風景のある家」の文字からなるところ、その構成中の「風景」の文字が「けしき。風光。」等の意味を有する(広辞苑第六版)とにも、その構成文字の全体からは、漠然とした「風景を有する家」ほどの意味合いを理解させるものであって、これが特定の意味合いを有する語句として理解されるものとはいい難いものである。
また、当審において職権をもって調査したが、本願の指定役務を取り扱う業界において、「風景のある家」の文字が、設計対象である住宅の説明において記述的に用いられているなど、いくつかのウェブサイトで使用されている例はあるものの、その数は少なく、その使用例をみても、必ずしも、原審において説示したような「良い風景(景色)が見える家」の意味合いを表す語として常に使用されている事情があるということもできないものであって、かつ、役務の提供促進のためのキャッチフレーズとして、取引上普通に使用されている事実を発見することはできなかった。 そうすると、本願商標は、「良い風景(景色)が見える家」の意味合いを直ちに認識させるものとはいい難いものであって、顧客の吸引、役務の提供促進等のためのキャッチフレーズの一種と理解させるものともいえない。 してみれば、本願商標は、その指定役務について使用にも、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものであり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標とはいえないものである。 したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
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1 本願商標 |
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第34類「紙巻たばこ、たばこ、たばこ製品、ライター、マッチ、喫煙用具」を指定商品とし、2014年(平成26年)3月20日にアルジェリアにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、同年9月22日に登録出願されたものである。
そして、その指定商品については、審判請求と同時に提出された平成28年3月18日付け手続補正書により補正された結果、第34類「たばこ」となったものである。 |
2 原査定における拒絶の理由の要旨 |
原査定は、「本願商標は、多少デザイン化されているものの、3桁のアラビア数字『555』のみからなるものであって、数字の表示態様の一類型にとどまり、それ以上に何らの意味合いを看取させるものでなく、また、全体とに特定の観念を看取させるものともいえない。そうすると、本願商標は、商品の品番・等級等を表示するための符号・記号とに類型的に採択、使用されるなど、きわめて簡単で、ありふれて使用される数字3文字を、普通に使用される域を脱しない程度に表してなるにすぎないものであるから、これをその指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は、別掲のとおり、上部横線を右先端に向けて細くなる三角形状に下部曲線の右湾曲部を三日月状にその左先端を円のようにそれぞれ厚みを持たせ、その他の線を細くデザインした書体で描いた「5」の数字を、狭い間隔で3つ並べて「555」とまとまりよく一体的に表になるものである。
そして、当審における調査によれば、本願の指定商品「たばこ」を取り扱う業界において、上記のようにデザイン化された書体からなる3桁の数字が、商品の品番・等級等を表示するための符号・記号として類型的に使用されている実情を見いだせない一方で、複数の商品について、3桁の数字からなる標章が商品の出所識別標識として採択、使用されている実情が見受けられる。 そうすると、本願商標は、デザイン化された同じ数字を3つ並べたことにより、視覚上、看者に強い印象を与えることとも相まって、その指定商品との関係において、商品の品番、等級等を表示するための符号又は記号と認識されるものとはいえないから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とはいえず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |