最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「エチケット/Etiquette」は、商標法第3条第1項第3号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-6927号、平成28年9月21日審決、審決公報第203号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「エチケット」の片仮名と「Etiquette」の欧文字を2段に横書きしてなり、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜き剤,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,口臭用消臭剤,口臭消臭スプレー,口中清涼剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」を指定商品として、平成26年6月6日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『エチケット』、及びそのフランス語表記である『Etiquette』の文字を2段に書してなるところ、『エチケット』は『礼儀、作法』の意味を表す語で、『互いが相手に対して不愉快な感じを与えないようにする心掛け』程の意味合いで我が国において普通に使用されている。そして、本願の指定商品中『口臭用消臭剤,口臭消臭スプレー,口中清涼剤』を取り扱う業界においては、該語が上記意味合いで普通に使用されている実情にある。そうすると、本願商標は、これを上記指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は、『エチケットのための口臭用消臭剤・口臭消臭スプレー・口中清涼剤』であることを認識するにとどまり、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものと認める。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「エチケット」の片仮名と「Etiquette」の欧文字を2段に横書きしてなるところ、上段の「エチケット」の片仮名は、「礼儀、作法」等の意味を有する外来語として慣れ親しまれているといえるものであり、下段の「Etiquette」の欧文字は、該片仮名をフランス語で表記したものと認められる。
 そして、「エチケット」の片仮名は、本願の指定商品中の「口臭消臭スプレー,口中清涼剤」等との関係において、「人と会う前のエチケットに」及び「お口のエチケット」などのように商品の紹介で使用されている事実があるが、これらは何らかの礼儀であることを暗示する語として使用されているといえるとしても、具体的に特定の商品の品質等を表示するものとはいい難いものである。
 さらに、「Etiquette」の欧文字が、本願の指定商品中の「口臭消臭スプレー,中清涼剤」等の商品の紹介で使用されている事実を見いだすことはできないし、該欧文字が「エチケット」の片仮名をフランス語で表記したものであると直ちに認識し得るほど慣れ親しまれた語であるということもできない。
 そうすると、本願商標は、これをその指定商品中の「口臭用消臭剤,口臭消臭スプレー,中清涼剤」に使用するときは、原審説示の意味合いを漠然と認識させることがあるとしても、それが商品の品質等を直接的かつ具体的に表示するものとはいえない。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
 その他、本願についての拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「昔ながらの」は、商標法第3条第1項第3号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-10402号、平成28年10月6日審決、審決公報第203号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「昔ながらの」の文字を標準文字で表してなり、第29類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年7月3日に登録出願、その後、指定商品については同年12月2日受付の手続補正書により、第29類「食用油脂,乳製品,冷凍果実,食用たんぱく」と補正されたものである。

2 原査定における拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『昔ながらの』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中『昔ながら』の文字部分は、『昔あったそのまま』程の意味合いを表し、食品に関連する分野において、『昔の製法でつくられたもの、昔あった商品と味や材料等が同じもの』程の意味合いを表すものとして使用されている。また、近年、昔の商品の復刻版や、昔の製法でつくられた各種の商品が製造・販売されている実情がある。そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する需要者等は、該商品が『昔の製法でつくられたもの、昔の商品と味や材料が同じ商品』であると認識するにとどまり、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎず、自他商品の識別標識としては認識しないとみるのが相当であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、前記1のとおり、「昔ながらの」の文字を横書きしてなるところ、該文字は、「昔あったそのまま」の意味を有する「昔ながら」の文字と格助詞等として使用される「の」の文字(ともに「広辞苑第六版」岩波書店発行)が結合してなるものと直ちに認識し得るものであって、構成全体より「昔あったそのままの」程の意味合いを認識させるものである。
 そして、「昔ながらの」の文字は、本願の指定商品に含まれる「チーズ、バター」等の商品の紹介で使用されているものの、それらの使用は、いずれも「昔ながらの素朴な味を再現したチーズ」及び「昔ながらの製法にこだわった」等のように、「素朴な味」及び「製法」といった他の語を伴うことで、「昔あったそのままの味」や「昔あったそのままの製法」であることが特定されているものである。
 してみると、「昔ながらの」の文字のみでは、それが「味」又は「製法」等の特定の品質等を表示するものとはいい難いものである。
 また、当審において、職権をもって調査するも、「昔ながらの」の文字が、商品の品質等を表示するものとして普通に使用されている事実を発見することができなかった。
 そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、原審説示のような意味合いを認識させるものとはいえないし、ほかに商品の品質等を直接的かつ具体的に表示するものともいえない。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '17/07/12