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A. 本願商標「カフェスタイル」は、商標法第3条第1項第3号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-14351号、平成29年1月11日審決、審決公報第206号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「カフェスタイル」の文字を標準文字で表してなり、第33類及び第43類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成27年7月9日に登録出願され、その後、指定商品及び指定役務については、原審における同年12月8日付け手続補正書及び同28年3月30日付け手続補正書により、最終的に、第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,麦芽及び麦を使用しないビール風味のアルコール飲料,麦芽または麦を使用したビール風味のアルコール飲料(ビール・ビール風味の麦芽発泡酒を除く。),中国酒,薬味酒」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)
 原査定は、「本願商標は、『カフェスタイル』の文字よりなるところ、構成中『カフェ』の文字部分は、『コーヒー、喫茶店』程の意味合いを表し、『スタイル』の文字部分は、『様式、型』等の意味合いを表すものであり、近年、飲食料品を取り扱う分野において、『カフェスタイル』の文字が『喫茶店風、喫茶店感覚』程の意味合いを表すものとして使用されているものと認められる。そうすると、本願商標を、その指定商品に使用しても、需要者に、『喫茶店風の商品、喫茶店感覚の商品』程の意味合いを理解、認識され、商品の品質を表示するものと認識されるにとどまり、自他商品の識別標識としては認識されないとみるのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、上記1のとおり、「カフェスタイル」の文字を書してなるところ、その構成中「カフェ」の文字が、「コーヒー。喫茶店」の意味を有し、「スタイル」の文字が、「様式。型」の意味を有するとしても、それらを結合した本願商標全体から、原審説示のごとき意味合いが直ちに認識され、商品の具体的な品質を表示するものと理解されるとはいい難いものである。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品について、「カフェスタイル」の文字が、商品の具体的な品質を表示するものとして使用されていると認めるに足る事実は発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、商品の品質を表示するものということはできないから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「PALM HOLZ」は、商標法第3条第1項第3号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-12566号、平成28年12月14日審決、審決公報第205号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「PALM HOLZ」の欧文字を標準文字で表してなり、第19類「木材」及び第20類「家具,ベンチ」を指定商品として、平成27年8月14日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『PALM HOLZ』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「PALM」の文字は、『ヤシ(シュロ)の枝』の意味を有するドイツ語であり、『HOLZ』の文字は、『木材.木製品』の意味を有するドイツ語であり、インターネット情報によると、『Palmholz』や『PALM HOLZ』の文字が、『ヤシの木製木材、ヤシの木製品』を表すものとして使用されている。そうすると、本願商標は、これをその指定商品中、『ヤシの木製木材,ヤシの木製家具,ヤシの木製ベンチ』に使用するときは、単に商品の品質、原材料を普通に用いられる方法で表示するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、前記1のとおり、「PALM HOLZ」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成は、同じ書体、同じ大きさによりまとまりよく表されているものであり、これより生ずる「パームホルツ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
 また、本願商標は、その構成中の「PALM」及び「HOLZ」の文字が、それぞれ、「ヤシ(シュロ)の枝」又は「木、木材」の意味を有するドイツ語であるとしても、我が国におけるドイツ語の普及度合いを考慮すると、これに接した需要者が、「PALM HOLZ」の文字から直ちに特定の意味を想起し、併せて、商品の品質を表すものとして理解、認識されるとはいい難いものである。
 そして、当審において職権をもって調査するも、「PALM HOLZ」の文字が商品の特定の品質を具体的に直接的に表示するものとして、普通に用いられていると認めるに足る事実を発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、その構成全体をもって特定の意味を有することのない一種の造語として認識されるというのが相当であるから、これをその指定商品に使用しても、その商品の品質、原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、かつ、商品の品質について誤認を生ずるおそれもないというべきである。
 したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '17/07/24