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A. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-17842号、平成29年5月15日審決、審決公報第211号)
別掲

 
1 本願商標
 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第9類「自動車用鉛蓄電池,その他の電池,磁心,抵抗線,電極」を指定商品として、平成27年6月15日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同年11月27日付け手続補正書により、第9類「自動車用バッテリー」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『Custom Neo』及び『カスタムネオ』の各文字部分を二段に書してなるものであるところ、その構成中の『Custom』及び『カスタム』の文字部分が『あつらえ。注文(制作、仕立て)』等の意味を有するものであり、また、その構成中の『Neo』及び『ネオ』の文字部分が、『新しい』等の意味を表すものであるから、本願商標は、全体として『注文による、新しいもの』の意味合いを理解・認識させるものである。そして、インターネット情報によれば、本願商標中の『カスタムネオ』、『カスタム』及び『ネオ』の語が、本願の指定商品を取り扱う業界において使用されている。そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者に、その商品が『注文による、新しいもの』であることを認識させるにとどまり、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、別掲のとおり、「Custom Neo」の欧文字及び「カスタムネオ」の片仮名を二段に横書きしてなるところ、該構成は、上段部の「Custom」と「Neo」の各欧文字の間に半角程度のスペースがあることから、これら2語を結合したものと看取させるものの、該文字は同じ書体、同じ大きさで表されており、下段部の片仮名部分も上段部と同じ幅で同じ書体、同じ大きさ及び等間隔で書され、上段部の欧文字部分の読みを特定したといえるものであるから、本願商標は、全体としてまとまりよく一体的に表されているものである。
 そして、本願商標は、その構成中、「Custom」及び「カスタム」の文字が「注文、あつらえ」の意味を有する語であり、また、「Neo」及び「ネオ」の文字が「新しい」の意味を有する語であって、その構成文字全体から原審説示の「注文による、新しいもの」程の意味合いを暗示させる場合があるとしても、いまだ漠然とした意味合いを想起させるにとどまるものであり、本願の指定商品との関係において、商品の特定の品質を直接的かつ具体的に表したものとして理解、認識させるものとはいい難いものである。
 さらに、当審における職権調査によれば、「Custom Neo」及び「カスタムネオ」の語が、その指定商品を取り扱う業界において、商品の品質を直接的かつ具体的に表すものとして、取引上普通に用いられていると認めるに足る事実を発見することができなかった。
 そうしてみると、本願商標は、その構成全体をもって特定の意味を有することのない語として認識されるというのが相当であるから、これをその指定商品について使用しても、商品の品質を表示したものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものであり、かつ、商品の品質について誤認を生ずるおそれもないというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「ROTARY」は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-3526、平成29年6月7日審決、審決公報第210号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「ROTARY」の文字を標準文字で表してなり、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」を指定商品として、平成27年2月18日に登録出願され、その後、指定商品については、審判請求と同時に提出された同28年3月9日提出の手続補正書により、第8類「電気かみそり」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 「ROTARY」の文字は、「回転する,回転式の」などの意味を有する一般的な語であり、また、当該文字の片仮名表記である「ロータリー」の文字が、本願商標の指定商品に関する分野において、「回転式の電気かみそり」(又はその刃)を表すものとして、「ロータリシェーバー」のように使用されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定商品中「回転式の電気かみそり」に使用した場合、取引者、需要者に、「回転式の電気かみそり」であることを理解又は認識させるにとどまるから、本願商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。

3 当審の判断
 本願商標は、前記1のとおり、「ROTARY」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「回転する,回転式の」の意味を有する平易な英単語といえるものであるが、職権により調査するも、本願商標の補正後の指定商品を取り扱う分野において、「ROTARY」の文字が、商品の品質等を表すものとして、取引上、一般に使用されている事実を見いだすことができない。
 そうすると、本願商標は、これをその補正後の指定商品について使用しても、商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものとはいえず、また、商品の品質について誤認を生じさせるおそれもないといわざるを得ない。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/07/19