最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「菌からあなたを守りたい」は、商標法第3条第1項第6号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-17033号、平成29年6月27日審決、審決公報第212号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「菌からあなたを守りたい」の文字を標準文字で表してなり、第3類、第5類、第16類及び第21類に属する商品を指定商品として、平成27年4月28日に登録出願されたものである(指定商品の詳細については審決公報他参照。)。

2 原査定における拒絶の理由の要旨
 原査定は、「本願商標は、『菌からあなたを守りたい』の文字からなるものであり、医療や人の健康に関連する医薬品・日用品等を取り扱う企業の一般的な姿勢・心構えを簡潔、端的に表現した文言として理解され、本願指定商品の取扱業者であれば何人も使用したい類の文言であって、取引上普通に用いられる標語の域を出ないものであるから、これをその指定商品に使用しても、顧客の吸引、販売促進等のためのキャッチフレーズを表示したものと理解されるにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「菌からあなたを守りたい」の文字を表してなるところ、その構成中の「菌」の文字が「菌類、細菌」の意味を有する語であることから、全体として「(細菌などの)菌からあなたを守りたい」程の意味合いを理解させるものである。
 そして、当審において職権をもって調査したところ、本願の指定商品の分野において、「菌からあなたを守りたい」の文字が、商品の説明や、原審説示のように顧客の吸引、販売促進等のためのキャッチフレーズとして一般的に使用されている事実は発見できなかった。
 以上のことから、本願商標は、その構成全体から、上記の意味合いを理解させるとしても、どのような商品であるかなど具体的に表すものではなく、本願の指定商品の説明や宣伝文句、キャッチフレーズとして、取引者、需要者に理解させるとまではいえないものである。
 そうすると、本願商標は、本願の指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであって、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「HYBRIDPUFF」は、商標法第3条第1項第3号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-1166、平成29年7月6日審決、審決公報第212号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「HYBRIDPUFF」の欧文字と、「ハイブリッドパフ」の片仮名とを上下二段に横書きしてなり、第21類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年12月22日に登録出願されたものである。
 その後、本願の指定商品は、原審における平成28年6月16日受付の手続補正書において、第21類「化粧用パフ」に補正された。


2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標の構成中、『HYBRID』及び『ハイブリッド』の文字は、『異種のものを組みあわせたもの』の意味を、『PUFF』及び『パフ』の文字は、『おしろいなどを付けるのに用いるスポンジ状の化粧道具』の意味を有する語であるから、本願商標は、『異種のものを組み合わせたおしろいなどを付けるのに用いるスポンジ状の化粧道具(化粧用パフ)』ほどの意味合いを生ずるところ、昨今、各種商品を取り扱う業界において、『HYBRID』及び『ハイブリッド』等の文字が『複数の異なる素材や機能からなる商品』を表す語として使用されており、また、本願の指定商品である『化粧用パフ』が、スポンジ部分に複数の異なる素材を配置し、より効果を発揮させることが想定される商品であることからすれば、本願商標を、その指定商品に使用した場合、取引者、需要者は、『異種の素材を組み合わせた化粧用パフ』であること、すなわち、商品の品質を表示したものとして認識するにとどまる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、前記1のとおり、「HYBRIDPUFF」の欧文字を横書きし、その下段に「ハイブリッドパフ」の片仮名を小さく横書きした構成からなるところ、その構成各文字は、同じ大きさ及び同じ書体をもって、まとまりよく表されており、また、下段の「ハイブリッドパフ」の片仮名は、その上段の「HYBRIDPUFF」の欧文字の読みを表したものと無理なく認識されるものである。
 そして、本願商標の構成中の「HYBRID」及び「ハイブリッド」の文字が、「異種のものを組みあわせたもの」の意味を有し、「PUFF」及び「パフ」の文字が、「おしろいなどを付けるのに用いるスポンジ状の化粧道具」の意味を有する語であるから、本願商標からは、原審説示の如き意味合いを想起させる場合があるとしても、かかる意味合いが、本願商標の指定商品の品質を直接的かつ具体的に表すものとまではいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「HYBRIDPUFF」又は「ハイブリッドパフ」の文字が、商品の品質を表示するものとして、取引上普通に使用されていると認めるに足りる事実は発見できず、他に、当該商品の取引者、需要者が、商品の品質を表示したものと認識するというべき事情も見あたらない。
 そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶すべき理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/07/19