最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 本願商標「WE MAKE NUTRITION/TASTE GOOD」は、商標法第3条第1項第6には該当しない、と判断された事例
(不服2017-650003号、平成29年6月20日審決、審決公報第213号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「WE MAKE NUTRITION」及び「TASTE GOOD」の欧文字を二段に横書きしてなり、第5類「Vitamins and dietary supplements.」を指定商品として、2015年(平成27年)7月17日に国際商標登録出願されたものである。
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2 原査定における拒絶の理由の要旨 |
原査定は、「本願商標は、『WE MAKE NUTRITION』及び『TASTE GOOD』の文字を二段に横書きしてなるところ、『我々は栄養補給・栄養摂取をおいしくする』ほどの意味合いを容易に認識させるものであるところ、本願商標の指定商品を取り扱う分野においては、商品の紹介に際し、『おいしさ』について言及される例が少なからず見受けられ、『おいしさ』は同分野において商品選択の一つの指標となるものである。そうすると、本願商標をその指定商品に使用するときは、需要者はこれを、企業イメージ向上を訴えるための標語(キャッチフレーズ,スローガン)の一類型として理解するにとどまり、需要者が何人かの業務に係るものと認識することができないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標の構成中の「WE」、「MAKE」、「NUTRITION」及び「TASTE GOOD」の各文字部分が、それぞれ「我々」、「〜にする」、「栄養」及び「おいしい」等の意味を表す英語であることから、全体として「我々は栄養摂取をおいしくする」ほどの意味合いを想起させることがあるとしても、本願商標の構成からは、特定の商品の特性若しくは品質等を表す宣伝広告、または、企業の特性や優位性を記述した企業理念・経営方針等としてのみ理解されるとまでは認め難く、むしろ、全体として特定の意味合いを有しない一種の造語と認識し把握されるとみるのが相当である。
そして、当審において職権をもって調査すると、請求人(出願人)が、その指定商品である「サプリメント」に本願商標を使用している事実が見受けられる一方で、「WE MAKE NUTRITION TASTE GOOD」の文字が、本願の指定商品を取り扱う業界において、宣伝広告、企業理念又は経営方針等を表示するものとして、一般的に使用されている事実を発見することができなかった。 そうすると、本願商標は、これをその指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえない。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
B. 本願商標「ふたえライナー」は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-13707、平成29年8月10日審決、審決公報第213号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「ふたえライナー」の文字を標準文字で表してなり、第3類及び第21類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年7月27日に登録出願、その後、指定商品については、第3類「二重瞼修整用化粧品」及び第21類「二重瞼修整用化粧用具」と補正されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、『ふたえライナー』と書したところ、該『ふたえライナー』という表記は、アイライナーのようにアイラインを描くための化粧品やそれを使用する際に用いられる化粧用具との関係からみて、アイライナーのようにふたえを描くための商品というような意味を想起させる。そして、ふたえを描けるアイライナー、二重を作れる化粧品が通信販売されていて、それらの商品の販売の際に『ふたえライナー』という表示が使用されている事実が認められる。こうした事情を考慮すると、ふたえ(二重)のアイラインを描く化粧品、二重を作る化粧品やそれらを使用する際に用いられる化粧用具について『ふたえライナー』という表示は、ふたえ(二重)を描いたり作ったりするための商品というような意味の表示として理解されるものである。そうとすると、本願商標は、指定商品中『ふたえ(二重)のアイラインを描くアイライナーなどの化粧品,ふたえ(二重)を作れる化粧品』、『アイラインや二重作りに係る化粧品の使用の際に用いられる化粧用具』に使用したときは、ふたえ(二重)を描いたり作ったりするための商品というような意味を理解させるにとどまり、商品の品質、用途を表示したものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の化粧品、化粧用具に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は、上記1のとおり、「ふたえライナー」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「ふたえ」の文字は、「二重」の漢字を平仮名で表記したものであり、「ライナー」の文字は、「線を引く」等の意味を有する英語「liner」を片仮名で表記したものであり、「化粧品」において、「アイライナー」のように使用されている実情がある。
しかし、当審において職権により調査したところ、「化粧品」との関係で、「ふたえ(二重)のアイラインを描くアイライナー」ほどの意味合いで使用されている事実が僅かに見受けられるものの、本願の指定商品「二重瞼修整用化粧品」及び「二重瞼修整用化粧用具」との関係において、「ふたえライナー」の文字が商品の品質、用途等を具体的に表示するものとして、取引上、普通に採択、使用されていると認めるに足る事実は見いだせず、また、ほかに、本願商標に接する取引者、需要者が、「ふたえライナー」の文字について商品の品質等を直接的かつ具体的に認識するというべき事情もない。 そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、商品の品質等を表示するものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、かつ、商品の品質の誤認を生ずるおそれもないものである。 したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとはいえないから、これを理由として本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |