最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「健康プラス」は、商標法第3条第1項第3には該当しない、と判断された事例
(不服2017-19078号、平成29年9月4日審決、審決公報第214号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「健康プラス」の文字を標準文字で表してなり、第5類及び第44類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成27年9月11日に登録出願されたものである。
 そして、本願の指定商品及び指定役務は、原審における平成28年4月13日付け手続補正書により、第5類「薬剤,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」に補正されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要旨
 原査定は、「本願商標は、『健康プラス』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、『プラス』の文字は、『加えること。有利なこと。』等の意味を有する親しまれた外来語であるから、全体として『健康を加えること。健康に有利なこと』等の意味合いを容易に理解させるものである。そして、第5類の指定商品においては、人の健康に関わる商品であり、その健康の回復、維持、増進のための成分を加え(配合し)ているのが実情であり、それら商品について、『ゴマ・大豆・玄米の健康成分をプラス』、『健康と美容を支える/大豆イソフラボンプラス』、『【サプリで健康プラス】』等のように紹介している実情がみられることから、本願商標をその指定商品に使用しても、『健康になるための成分を加えた商品』等の意味合いを認識させるにとどまり、単に商品の用途、品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「健康プラス」の文字を標準文字で表してなるところ、これを構成する「健康」の文字が「身体に悪いところがなく心身がすこやかなこと。」の意味を、「プラス」の文字が「加えること。足すこと。」の意味を有する語として、いずれも一般に知られた語であるとしても、これらを組み合わせてなる本願商標の構成全体から、特定の意味合いを理解、認識させるとまではいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「健康プラス」の文字が、商品の用途、品質を表示するものとして普通に用いられていると認めるに足る事実も見いだせない。
 そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が商品の用途、品質を表示したものと認識することはないとみるのが相当である。してみれば、本願商標は、その指定商品の用途、品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「和の贅沢」は、商標法第3条第1項第3号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-6652、平成29年9月13日審決、審決公報第214号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「和の贅沢」の文字を横書きしてなり、第29類及び第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成28年4月27日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同年11月8日付け手続補正書により、第29類「食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『和の贅沢』の文字を普通に用いられる方法で表してなるところ、その構成中の『和』の文字部分は『日本製』等の意味を有し、また、『贅沢』の文字は、『必要以上に金をかけること。』の意味を有し、指定商品を取り扱う業界においては、原材料をたっぷり使用していることなど『高級なものであること、高価なものであること』を表す語として使用されているものといえる。そして、「和の贅沢」の文字は、飲食料品を取扱う業界において、『日本製の高級な商品,日本製の高価な商品』程の意味合いをもって使用されている実情があることからすれば、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は該商品が前記程の意味合いを表したものと理解するにとどまり、単に商品の品質を表示したにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、上記1のとおり、「和の贅沢」の文字を横書きしてなるところ、その構成中の「和」の文字が「日本製」の意味を、同じく「贅沢」の文字が「必要以上に金をかけること。」の意味をそれぞれ有する語として、一般に知られているものであるとしても、これらを格助詞「の」を介して連結させた本願商標は、「和の贅沢」の文字をまとまりよく一体的に表してなるものであって、その構成全体から、特定の意味合いを理解、認識させるとまではいい難いものである。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「和の贅沢」の文字が、商品の品質を表示するものとして普通に用いられていると認めるに足る事実も見いだせない。
 そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が商品の品質を表示したものと認識することはないというのが相当である。
 してみれば、本願商標は、その指定商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/08/02