最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「デザイナーズスタイル/DESINER'S STYLE」は、商標法第3条第1項第6には該当しない、と判断された事例
(不服2017-6215号、平成29年9月22日審決、審決公報第215号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「デザイナーズスタイル」及び「DESIGNER'S STYLE」の各文字を二段に書してなり、第6類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年11月12日に登録出願されたものである。
 その後、本願の指定商品については、原審における平成28年4月18日付け手続補正書により、第6類「建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製間仕切材,金属製垣根,金属製フェンス,金属製建造物組立てセット,金属製金具,金網,金属製のネームプレート及び表札,金属製郵便受け,金属製建具,金庫」と補正されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『デザイナーズスタイル』及び『DESIGNER'S STYLE』の各文字を二段に書してなり、その構成全体として『デザイナーによる美術・工芸・建築などの様式』ほどの意味合いを容易に認識させるものである。そして、本願の指定商品を取り扱う業界における取引の実情に鑑みれば、本願商標は、需要者に『美観や機能性に優れたデザイナーの手による商品であること』を理解させるにとどまるものであり、商品の優位性を表示するための売り文句の一種として認識されるものであるため、構成全体として、何ら格別顕著なところはなく、自他商品を区別するための識別標識として機能するものと理解されないものである。したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標といわざるをえないから、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、上記1のとおり、「デザイナーズスタイル」及び「DESIGNER'S STYLE」の各文字を上下二段に表示してなるものであるところ、上段の「デザイナーズスタイル」の文字部分は、下段の「DESIGNER'S STYLE」の文字部分の読みを表したものと認識されるものである。
 そして、下段の「DESIGNER'S STYLE」の文字中の「'S」の文字部分は、所有格を表す文字として、一般に広く知られているものであるから、本願商標は、その構成全体から「デザイナーによる様式」ほどの意味合いを認識させる場合があるものの、原審説示のように、美観や機能性に優れたデザイナーの手による商品であることを理解させ、商品の優位性を表示するための売り文句の一種として認識されるものであるとまではいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、「デザイナーズスタイル」と「DESIGNER'S STYLE」の文字のいずれについても、本願の指定商品を取り扱う業界において、原審説示のように、美観や機能性に優れたデザイナーの手による商品であることを理解させるような商品の優位性を表示するための売り文句の一種として、一般に使用されている事実を発見することができなかった。
 そうすると、本願商標は、その指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが相当であるから、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「CIVIL AIR PATROL」は、商標法第4条第1項第15号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-9893、平成29年10月10日審決、審決公報第215号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「CIVIL AIR PATROL」の文字を標準文字で表してなり,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,平成28年5月9日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 本願商標は「CIVIL AIR PATROL」の文字を表してなるところ、当該文字は、米国の民間航空部隊の名称を表す語として知られており、軍隊等の組織では制服が使用され、それら制服が取引されている実情もある。そのため、本願商標を、その指定商品に使用するときは、あたかも前記部隊又はこれと組織的、経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。


3 当審の判断
 本願商標は、上記1のとおり、「CIVIL AIR PATROL」の文字を表してなるところ、当該文字は、英和辞典の「Civil Air Patrol」の語義の記載によれば、米国では1941年に編成された、非常時に志願によって編成される部隊であって、緊急時の捜索に合衆国空軍を助け、航空宇宙教育や青少年プログラムを行う民間のボランティア組織である「民間航空哨戒部隊」を指称する英語ということができる(参照:「ランダムハウス英和大辞典[特装版]」小学館発行;「リーダーズ・プラス」研究社発行)。
 しかし、当審において職権をもって調査をしたところ、「CIVIL AIR PATROL」の文字が、我が国において、上記組織の業務に係る商品又は役務を表示するものとして使用され、需要者の間に広く認識されている事実を発見することができなかった。
 そうすると、本願商標は、米国のボランティア組織である「民間航空哨戒部隊」を指称する英語であるとしても、特定の者の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国の需要者、取引者の間で広く認識されているものということはできないから、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者、取引者をして、上記組織を連想、想起させることはなく、その商品が同組織と組織的、経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/08/03