最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「リペアフィルム/Repair Film」は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-2914号、平成29年10月19日審決、審決公報第216号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「リペアフィルム」の片仮名及び「Repair Film」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、第3類「洗顔料,せっけん類,香料,薫料,化粧品,歯磨き,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として、平成28年2月17日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標の構成中、『リペア』及び『Repair』の文字は、『修復する』の意味を有する語であり、『フィルム』及び『Film』の文字は、『薄皮。薄膜。』の意味を有する語である。そして、本願の指定商品を取り扱う業界においては、『リペア』及び『Repair』の文字が、髪のダメージや爪の亀裂などを修復する効果を有する商品を表現するものとして普通に使用され、また、『フィルム状の商品』が存在する実情が認められることからすれば、本願商標を、その指定商品に使用しても、これに接する需要者は、『修復効果のあるフィルム状の商品』ほどの意味合いを認識するにとどまり、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記意味合いに照応する商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、上記1のとおりであるところ、上段の「リペアフィルム」の文字部分は、下段の「Repair Film」の文字部分の読みを表したものと認識されるものである。
 そして、「Repair」の文字は、「修理する、修繕する」及び「修理、修繕」の意味を有する英語として、また、「Film」の文字は、「薄膜、薄皮」の意味を有する英語として、いずれも一般に広く知られているものであることから、本願商標は、その構成全体から「修理する薄膜」ほどの意味合いを認識させる場合があるとはいえるものの、原審説示のように、「修復効果のあるフィルム状の商品」ほどの意味合いを認識させるものであるとまではいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、「リペアフィルム」の文字と「Repair Film」の文字のいずれについても、本願の指定商品を取り扱う業界において、原審説示の意味合いを認識させるものとして、一般に使用されている事実を発見することができなかった。
 そうすると、本願商標は、これに接する取引者、需要者をして、商品の品質を直接的かつ具体的に表示するものとして、看取、理解されるとはいい難いものである。
 してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものとはいえず、かつ、商品の品質の誤認を生じさせるおそれもないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではないから、これを理由として本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「香味ペースト」は、商標法第3条第1項第6号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-898、平成29年10月31日審決、審決公報第216号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「香味ペースト」の文字を標準文字で表してなり、第30類「調味料,香辛料」他を指定商品として、平成27年11月9日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標の構成中、『香味』の文字は、『においとあじわい。』『飲食物の香気。』の意味を有し、『香りが強く風味のある野菜』が『香味野菜』、『飲食物に香味を添えるもの。シソ・ネギ・ユズ・ミョウガ・ゴマなど』が『香味料』と称され、また、特に調味料において、『香味調味料』『香味ソース』『香味みそ』のように、『香味』の文字が、『香気を有する』といった意味合いで使用されており、加えて、本願商標の構成中の『ペースト』の文字は、『材料をすりつぶし、柔らかく滑らかな状態に仕上げた食品。』の意味を有し、食料品の分野で、同意味合いの状態の食品について広く使用されている。そうすると、本願商標をその指定商品中、例えば『調味料』に使用しても、これに接する需要者は、本願商標について、香気を有するペースト状のもの、という商品の特性を端的に表現したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものであるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「香味ペースト」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「香味」の文字が「においとあじわい。飲食物の香気。」の意味を有する語であり、「ペースト」の文字が「材料をすりつぶし、柔らかく滑らかな状態に仕上げた食品。」の意味を有する語(いずれも「広辞苑 第六版」(岩波書店発行))であることから、その構成全体として「香気を有するペースト状のもの」程の意味合いを想起させるものである。
 そして、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品の分野において、「香味ペースト」の文字が、原審説示のように、商品の特性、特徴等の表記として、一般的に使用されている事実を見いだすことはできない。
 そうすると、本願商標は、その構成全体から、上記の意味合いを想起させるとしても、該意味合いはあくまでも漠然とした意味合いを想起させるにとどまるというべきであって、原審説示のように商品の特性を端的に表現したものとして、本願指定商品の取引者、需要者に理解されるとはいい難い。
 してみれば、本願商標は、これを本願の指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであって、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/08/03