最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「和の伝統色」は、商標法第3条第1項第3号に該当する、と判断された事例
(不服2017-2199、平成29年11月28日審決、審決公報第219号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「和の伝統色」の文字を標準文字で表してなり、第1類、第2類、第16類、第17類、第19類及び第20類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成28年5月17日に登録出願され、その後、指定商品については、最終的に第19類「フェノール樹脂含浸化粧板、ポリエステル樹脂含浸化粧板、メラミン樹脂含浸化粧板、メラミン樹脂製不燃化粧板、合成樹脂を主材とする建築用化粧板」に補正されたものである。

2 当審における拒絶理由
 当審において、請求人に対し、「本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨の拒絶理由を、平成29年8月3日付けで通知した。

3 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
 本願商標は、上記1のとおり、「和の伝統色」の文字を標準文字で表してなり、これは、普通に用いられる方法で表示するものである。
 そして、本願商標の構成文字からは、「日本の伝統的な色彩」の意味合いが容易に看取されるところ、本願の指定商品に関連する建築業界において、「和の伝統色」の文字が上記意味合いで、色彩を表すものとして用いられている事実があることは、別掲1、のとおりであり、また、その他の業界においても、同様に用いられている事実があることは、別掲2のとおりである(別掲1・2は掲載省略:和の伝統色の使用例等)。
 さらに、本願商標と意味合いを同じくする「日本の伝統色」の文字についても、別掲3及び4のとおり、建築業界を含む各種業界において、色彩を表すものとして使用されている事実がある(別掲3・4は掲載省略:日本の伝統色の使用例等)。
 そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、本願商標から、「日本の伝統的な色彩」の意味合いを看取し、その商品が日本の伝統的な色彩のものであること、すなわち、商品の品質を表示したものとして理解するにすぎないから、本願商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する商標のみからなる商標といえる。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)請求人の主張について
 請求人は、本願の指定商品を「フェノール樹脂含浸化粧板、ポリエステル樹脂含浸化粧板、メラミン樹脂含浸化粧板、メラミン樹脂製不燃化粧板、合成樹脂を主材とする建築用化粧板」のみとし、その他の指定商品を削除したから、商標法第3条第1項第3号にかかる拒絶理由は解消した旨主張する。
 しかしながら、本願商標を補正後の指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の品質を表示したものとして理解するにすぎないこと上記(1)のとおりであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

(3)まとめ
 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するから、登録することはできない。
 よって、結論のとおり審決する。

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B. 本願商標「社長の終活」は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-10784号、平成30年1月24日審決、審決公報第219号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「社長の終活」の文字を標準文字で表してなり、第35類、第36類、第41類及び第45類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成28年2月8日に登録出願され、その後、手続補正書により、第35類「商品の販売に関する情報の提供、ホテルの事業の管理、経営に関するコンサルティング、経営に関する情報の提供」他、第36類「税務相談、税務代理」他、第41類「経営者・管理者・一般従業者に対する教育研修」他及び第45類「法律相談」他と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『社長の終活』の文字を標準文字で表示してなるところ、当該文字は、指定役務との関係において、『中小企業経営者である社長の事業承継』程の意味に通じる語として、会計事務所のインターネット記事や雑誌のタイトル等において広く用いられており、また、そうした事業継承に関するセミナー等も広く行われている実情をうかがい知ることができる。そうすると、上記意味合いを容易に看取させる『社長の終活』の文字からなる本願商標を、その指定役務中の『経営に関する・コンサルティング』等に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その役務が『中小企業経営者である社長の事業承継を内容とするものであること』を表示したものと理解するにすぎないものであるから、本願商標は、単に役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示したものといえる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「社長の終活」の文字からなるところ、その構成中の「社長」の文字は、「社団などの長。会社の最高責任者。」等の意味を有する語であり、「終活」の文字は、「死の前に必要なさまざまなケアと、死後一定期間の後始末について準備する活動のこと。」の意味を有する語(「現代用語の基礎知識2017」自由国民社)である。
 そして、これらの文字を格助詞の「の」を介して連結させた本願商標の構成全体からは、「社長が死後の後始末について準備する活動」程の意味合いを想起させる場合があるとしても、原審説示のような意味合いを直ちに看取させるとはいい難く、また、本願商標が、特定の役務の質を直接的かつ具体的に表示するものとして、取引者、需要者に認識されるともいい難いものである。
 さらに、当審において職権をもって調査するも、本願の指定役務を取り扱う業界において、「社長の終活」の文字が、役務の具体的な質を表示するものとして、取引上一般に使用されている事実を発見することができなかった。
 そうすると、本願商標は、これをその指定役務に使用しても、役務の質を表示するものということはできないから、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものというべきであり、かつ、役務の質の誤認を生ずるおそれもないものというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/11/19