最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「生ボディソープ」は、商標法第3条第1項第6号及び同第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-5381、平成30年2月7日審決、審決公報第220号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「生ボディソープ」の文字を標準文字で表してなり、第3類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年12月25日に登録出願されたものである。
 そして、本願の指定商品は、原審における平成28年7月12日付け手続補正書により、第3類「ボディソープ,身体用洗浄剤」に補正されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『生ボディソープ』の文字を標準文字により表してなるところ、本願の指定商品を取り扱う業界においては、『無添加のボディソープ』程の意味合いで『生ボディソープ』の文字が使用されている実情や『生』の文字が『無添加の商品』であることを表現するものとして多数使用されている実情が認められる。そうすると、本願商標をその指定商品中の『無添加のボディソープ,無添加の身体用洗浄剤』について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ず、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、また、本願の指定商品中、上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「生ボディソープ」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、「動植物を採取したままで、煮たり、焼いたり、乾かしたりしないもの。また、その状態。」等の意味(「広辞苑第六版」、株式会社岩波書店発行)を有する「生」の文字と「ボディソープ」の文字とを結合してなるものとして看取、理解されるとはいえるが、その構成全体から、特定の意味合いを想起させるとはいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「生ボディーソープ」の文字が、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないというべき事情は発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語を表したものとして認識されるとみるのが相当であり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。
 してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえないものであり、かつ、商品の品質の誤認を生ずるおそれもないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「CMS」は、商標法第4条第1項第3号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-7912号、平成30年2月13日審決、審決公報第220号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「CMS」の文字を標準文字で表してなり、第1類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年9月29日に登録出願されたものである。
 そして、本願の指定商品は、当審における平成29年6月1日受付の手続補正書により、第1類「電子部品製造用の工業用化学品,エレクトロニクス及びコンピュータ産業において用いる工業用化学品,半導体製造用化学品」に補正されたものである。


2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、『移動性野生動物種の保全に関する条約』の略称である『CMS』を表示する標章であって、経済産業大臣が指定するもの(平成16年7月20日経済産業省告示第247号)と同一又は類似のものである。そして、該条約は、『渡り鳥など、餌や繁殖場所を求めて、季節の変化などに対応して定期的に長距離の移動を行う野生生物(移動性動物種)を保護するための条約』であって、『具体的には、移動経路を分断する道路や鉄道などの開発事業の評価、密猟や違法取引の根絶、湿地や干潟、沿岸域など移動拠点の再生に取り組む。』ものであるところ、本願の指定商品中には、該条約が取り込むべき事業(湿地や干潟、沿岸域などの移動拠点の再生等)との関連性が高い商品が含まれていることから、本願商標をその指定商品に使用するときは、当該機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「CMS」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、「移動性野生動物種の保全に関する条約」の略称を表示する標章であって経済産業大臣が指定するもの(平成16年7月20日経済産業省告示第247号)と同一のものといえる。
 ところで、本願の指定商品は、前記1のとおり、第1類「電子部品製造用の工業用化学品,エレクトロニクス及びコンピュータ産業において用いる工業用化学品,半導体製造用化学品」であるところ、これらの商品は、専ら電子部品や半導体の製造などといったエレクトロニクス及びコンピュータ産業において用いる工業用化学品であるから、その用途に鑑みれば、上記条約が取り組むべき事業との関連があるものとして認識されるとはいい難い。
 そうすると、本願商標が、上記のとおり、経済産業大臣の指定するものと同一の標章からなるものであるとしても、これをその指定商品に使用したときに、その標章に係る国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれはないというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/11/19