最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「おうち婚」は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-17571号、平成30年5月1日審決、審決公報第222号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「おうち婚」の文字を標準文字で表してなり、第41類、第44類及び第45類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成28年7月28日に登録出願され、その後、指定役務については、審判請求と同時に提出された同29年11月28日付けの手続補正書により、第45類「冠婚葬祭の企画及び運営,衣服の貸与,装身具の貸与,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,ファッション情報の提供,身の上相談,家事の代行」と補正されたものである。

2 原査定における拒絶の理由の要旨
 原査定は、「本願商標は、『お宅』を意味する『御内』を認識させる『おうち』の文字と、『結婚』を意味する『婚』の文字を一連に『おうち婚』と標準文字で表してなるところ、『御内での結婚』程の意味合いを容易に認識させ、また、インターネットの情報によれば、『おうち婚』の文字は上記意味合いで使用されているものである。そうすると、これを本願指定役務中、御内での結婚に関する役務に使用しても、単に役務の質(内容)を表示するにすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、前記1のとおり、「おうち婚」の文字からなるところ、その構成文字は、同書、同大、等間隔で外観上まとまりよく一体に表されているものである。
 そして、本願商標は、その構成中の「おうち」の文字が「自分の家の丁寧な言い方」の意味を有する「お家(御家)」の語を想起させ、「婚」の文字が「夫婦の縁組をすること」の意味を有する語(いずれも、株式会社小学館「デジタル大辞泉」)であるとしても、「おうち婚」の文字は、辞書等に載録されていないことからすると、原審説示のような意味合いを直ちに認識させるとはいい難いものである。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定役務を取り扱う業界において、「おうち婚」の文字が、具体的な役務の質を表示するものとして、取引上一般に使用されている事実を発見することができなかった。
 そうすると、本願商標は、その構成全体をもって特定の語義を有することのない一種の造語を表したものと認識されるとみるのが相当であって、これをその指定役務に使用しても、具体的な役務の質等を表示するものとはいえず、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものというべきであり、かつ、役務の質の誤認を生ずるおそれもないものである。
 したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「SCREEN MASTER」は、商標法第4条第1項第11号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-11923号、平成30年4月24日審決、審決公報第222号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「SCREEN MASTER」の欧文字を標準文字で表してなり、第9類に属する出願時の願書に記載の商品を指定商品として、2015年(平成27年)9月3日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、平成28年3月2日に登録出願されたものである。そして、指定商品については、同年9月30日提出の手続補正書をもって、第9類「発光ダイオード」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由

(1)原査定は、「本願商標は、次の(2)の登録商標と類似であって、その商標登録に係る指定商品と類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨判断し、本願を拒絶したものである。

(2)登録第5798726号商標(以下「引用商標」という。)
 引用商標は、「ScreenMaster」と「スクリーンマスター」の文字を2段に横書きしてなり、平成27年5月28日に登録出願、第9類「インクジェットプリンタ」を指定商品として、同年10月9日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。


3 当審の判断

(1)本願商標の指定商品と引用商標の指定商品について
 本願商標の指定商品は、上記1のとおり「発光ダイオード」であり,引用商標の指定商品は、上記2のとおり「インクジェットプリンタ」である。
 そこで、両商標の指定商品の類否を検討すると、両者はいずれも「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品であり、前者は後者の部品として使用されているものといえる。
 しかしながら、本願商標の指定商品「発光ダイオード」と引用商標の指定商品「インクジェットプリンタ」とは、一般に、前者が各種機器の部品として用いられ、必ずしも後者の専用部品といえるものでもなく、後者は印刷に用いられるものであるから、両者の用途は明らかに異なるものである。
 また、両者の需要者は、前者が主として各種機器を製造する事業者であり、後者が一般需要者であるから、明らかに異なっている。
 さらに、販売部門については、前者が主として専門店で販売されるのに対し、後者が家電量販店などで販売されるといった差異を有しており、また、生産部門については、一般的に両者のそれが共通するというべき事情は見いだせない。
 そうすると、両商標の指定商品は、それらが「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品であって、部品と完成品の関係にあるとしても、販売部門が異なり、用途及び需要者が明らかに異なるものであるから、両者に同一又は類似の商標を使用しても、それら商品が同一営業主の製造、販売に係る商品と誤認混同されるおそれのないものと判断するのが相当である。
 また、他に両商標の指定商品が類似するというべき事情は見いだせない。
 してみれば、両商標の指定商品は非類似の商品といわなければならない。

(2)まとめ
 以上のとおりであるから、本願商標と引用商標とが類似するとしても、両商標の指定商品は非類似の商品であるから、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/12/17