最近の注目審決・判決を紹介します。
|
1 本願商標 |
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成28年8月10日に登録出願されたものである。その後、その指定商品は、第30類「わかめ入り即席ラーメンのめん」と補正された。
|
2 原査定の拒絶の理由 |
本願商標は、中央部に「わかめ」の文字を紫色で大きく表し、そして、その構成中の「め」の文字の下部の矩形内に、「ラ」、「ー」、「メ」及び「ン」(枠内の文字は,それぞれ順にオレンジ色・黄色・黄緑色・緑色で塗りつぶされた中に表されている。)の文字を表してなるところ,本願商標の構成中「わかめ」の文字は、その指定商品との関係において、該商品が「わかめ入り」であることを表示するにすぎず、また、「ラーメン」の文字もその商品が「ラーメン(のめん)」であることを表示するものだから、その全体から「わかめ入りラーメン(のめん)」の意味を理解させる。
そして、本願商標は、「ラーメン」の文字部分のある矩形部分も、単に消費者や需要者に親しみや好感、信頼感などのよい印象を抱いてもらえるよう趣向が施されたものと認識させるにすぎず、全体として、未だ、普通に用いられる方法を脱しない程度に表してなるにすぎない。 そうとすれば、本願商標を、その指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、該商品が「わかめ入りの即席ラーメンのめん、わかめ入りの調理済みラーメンのめん」の意味を認識、理解するにとどまるというのが相当であるから、単に商品の原材料、品質を表示するにすぎないと認められる。 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。 |
3 当審の判断 |
(1)本願商標は、別掲のとおり、「わかめ」の平仮名を紫色で大きく表し、その右下に「め」の文字と幅を揃えるように「ラーメン」の片仮名を右上がりに小さく表してなるもので、その片仮名部分を横長四角形で囲い,その内部を各構成文字それぞれが収まるように4つに枠で区切り、各枠内は左から赤、黄、黄緑及び緑色で塗りつぶしてなるものである。 (2)そして、本願商標の構成中、「わかめ」の文字は、「コンブ科の褐藻。古くから食用とし、養殖もされる。」の意味を有し、「ラーメン」の文字は,「中国風の麺。中華そば。」の意味を有する(いずれも「大辞泉第2版」小学館)ため、構成文字全体としては「わかめ入りのラーメン」程度の意味合いを容易に認識させるといえる。
(3)しかしながら、本願商標のような構成態様、つまり,右上がりの文字を囲う横長四角形の内部を、各構成文字が収まるように4つに枠で区切ることや、それら枠内を異なる色で彩色することは、単に文字を強調するための装飾とは異なる印象を与えるものである。
(4)以上のとおり、本願商標は、その構成全体をもって、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものといえるから、これをその指定商品について使用しても、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえないものである。
|
B. 本願商標「はらぱん」は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2018-639号、平成30年6月14日審決、審決公報第222号)
|
1 本願商標 |
本願商標は、「はらぱん」の文字を標準文字で表してなり、第25類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成28年12月16日に登録出願されたものである。
|
2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、『はらぱん』の文字を標準文字で表してなるところ、本願商標の構成中の『ぱん』の文字は、本願の指定商品を取り扱う業界において、『短パン』『腰パン』等のように、『ぱん(パン)』の文字部分がパンツの略語として複合語に用いられており、また、引用情報によれば、腹巻とパンツが一体化した腹巻き付きのパンツについて『腹パン』と称され、一般に製造・販売されている事情を窺い知ることができる。以上によれば、『はらぱん』の文字を標準文字で表してなる本願商標を、その指定商品中『被服』との関係において『腹巻き付きのパンツ』に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、商品の品質を表示したものとして認識するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当である。また、上記認定によれば、指定商品中『被服』との関係において、本願商標を『腹巻き付きのパンツ』以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。したがって、本願商標は、指定商品中『被服』との関係において、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品(『腹巻き付きのパンツ』)以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨を認定、判断し、本願を拒絶したものである。
|
3 当審の判断 |
本願商標は、「はらぱん」の文字からなるところ、その構成中「はら」の文字部分が「腹」の表音であり、「ぱん」の文字部分が、本願指定商品を取り扱う業界において、例えば「短パン」「腰パン」等のようにパンツの略語として複合語に用いられている「パン」の文字の平仮名表記であるとそれぞれ理解される場合があるとしても、その構成文字は同書、同大、等間隔で、一連に表されており、全体的にまとまりよく、一体のものとして把握できるものであって、一種の造語として看取されるものである。
そうすると、本願商標が、原審説示のように「腹巻き付きパンツ」程の意味合いを暗示させる場合があるとしても、これがその構成全体をもって直ちに特定の商品の品質等を具体的かつ直接的に表したものと理解、認識させるとはいい難いものである。 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「はらぱん」の文字が、商品の品質を表示するものとして、取引上普通に用いられていると認めるに足る事実も見いだせない。 してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、かつ、商品の品質の誤認を生じさせるおそれもないものである。 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではないから、これを理由として本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |