最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「やばうま」は、商標法第3条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-4800号、平成30年11月27日審決、審決公報第230号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「やばうま」の文字を標準文字で表してなり、第30類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成28年2月25日に登録出願されたものである。  その後、本願の指定商品については、原審における平成28年9月27日付け手続補正書により、第30類「アイスクリーム,アイスキャンディ,シャーベット,アイスミルク,ラクトアイス,氷菓,茶,コーヒー,ココア」に補正されたものである。


2 原査定における拒絶の理由(要点)

 原査定は、「本願商標は、『やばうま』の文字を標準文字で表してなるところ、本願の指定商品を取り扱う食品業界においては、危険なくらいおいしい、とてもおいしいほどのおすすめの商品や料理であることを需要者にアピールするために、商品や料理名と結びつけて、『やばうま』の語が使用されている実情にある。そして、本願商標は、人の注意をひくように工夫した宣伝文句といえるものであって、格別要部として把握し得る部分があるとも認め難いことから、その意味合いを看取した需要者は、これをその取扱いに係る特定の商品について使用する商品識別の標識と認識するというよりは、むしろ、出願人の取り扱っている商品に関し、『危険なくらいおいしい、とてもおいしいほどのおすすめの商品』であることを端的に表現した宣伝広告の一種と認識し、理解するとみるのが相当である。そうとすると、本願商標は、これを補正後の指定商品に使用しても、需要者、取引者は、顧客の吸引、販売促進等のための宣伝広告の一類型を表示したものと理解するにとどまり、何人かの業務に係る商品であることを認識できないものといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、前記1のとおり、「やばうま」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、個人のブログやレシピサイトにおいて使用される場合があることは見受けられるものの、本願の補正後の指定商品との関係においては、原審が示した「危険なくらいおいしい、とてもおいしいほどのおすすめの商品」といった意味合いを表す語句として一般に使用されるものとはいい難く、また、当審において職権をもって調査するも、当該文字が、本願の補正後の指定商品を取り扱う業界において、上記意味合いを表す語句として、広く一般に使用されているといった事実を発見することもできなかった。
 そうすると、本願商標は、その指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが相当であるから、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


〔戻る〕


B. 本願商標「SX-R」は、商標法第3条第1項第5号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-3501、平成30年12月26日審決、審決公報第230号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「SX-R」の文字を標準文字で表してなり、第12類「船舶並びにその部品及び附属品,水上オートバイ(パーソナルウォータークラフト)並びにその部品及び附属品」を指定商品として、平成28年6月8日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要点

 原査定は、「本願商標は、『SX−R』の文字を標準文字で表してなるものであるが、欧文字2字と欧文字1字の組合せは、一般に商品の品番・型番等を表示する記号として用いられるものであり、本願商標もその一類型にすぎず、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標にすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、「SX−R」の文字からなるところ、その構成は、「SX」と「R」の文字を「−(ハイフン)」で結合したものであって、同書、同大、同間隔でまとまりよく一体的に表されているものである。
 そして、本願の指定商品中の「水上オートバイ」を取り扱う業界においては、欧文字と欧文字を「−(ハイフン)」で組合せてなる標章が商品の出所識別標識として使用されている実情にあるうえ、請求人が当審において提出した証拠によれば、同人は、本願商標を商品「水上オートバイ」に使用していることが認められるものである。
 また、当審において、職権をもって調査するも、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、「SX−R」の文字が商品の記号、符号を表示するものとして、取引上普通に使用されている事実は発見できず、かつ、その他に本願の指定商品の取引者、需要者が該文字を商品の記号、符号の一類型であることを表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
 してみれば、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるものとはいえないものであって、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たすものといわなければならない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


〔戻る〕
鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/04/29