最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「蒟蒻効果」は、商標法第3条第1項第3号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-11864号、平成31年2月26日審決、審決公報第232号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「蒟蒻効果」の文字を標準文字で表してなり、第30類「こんにゃくを用いた天ぷら粉,こんにゃくを用いたから揚げ粉,こんにゃくを用いた食用粉類,こんにゃくを用いた即席菓子のもと,こんにゃくを用いたプレミックス粉,こんにゃくを用いたスパゲッティの麺,こんにゃくを用いたマカロニ,こんにゃくを用いた穀物の加工品,こんにゃくを用いた調理済みスパゲッティ,こんにゃくを用いたぎょうざ,こんにゃくを用いたしゅうまい,こんにゃくを用いたラビオリ,こんにゃくを用いたパスタソース」を指定商品として、平成29年5月26日に登録出願されたものである。


2 原査定における拒絶の理由(要点)

 原査定は、「本願商標は、『蒟蒻効果』の文字を標準文字で表してなるところ、各種ウェブサイトにおいて、こんにゃくにダイエット効果や便秘の改善といった効能があることが紹介されており、また、そのような効能を『こんにゃく効果』又は『コンニャク効果』と表す実情があることから、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する需要者は、『こんにゃくが有する効能がある』といった程度の意味合いを認識するにすぎないものといえる。したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、前記1のとおり、「蒟蒻効果」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「蒟蒻」の文字と「効果」の文字とを結合してなるものと看取されるとはいえるものの、原審が示した意味合いまでをも直ちに認識させるとはいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「蒟蒻効果」の文字が、商品の具体的な品質を表示するものとして、取引上、一般に使用されていると認めるに足る事実を発見することができなかった。
 さらに、本願商標をその指定商品に使用したときに、これに接する取引者、需要者が、「蒟蒻効果」の文字について、商品の品質を表示したものと認識するというべき事情も見当たらない。
 そうすると、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の品質を表示するものとして認識されることはないというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「素材の力」は、商標法第3条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-7576、平成31年3月11日審決、審決公報第232号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「素材の力」の文字を標準文字で表してなり、第5類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成29年3月31日に登録出願され、その後、本願の指定商品については、原審における同年12月28日付け手続補正書により、第5類「薬剤,医療用試験紙,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,尿吸収用パッド,おりものシート,脱脂綿,綿棒,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,おむつ,おむつカバー,失禁用パンツ,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」に補正されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要点

 原査定は、「本願商標は、『素材の力』の文字を標準文字で表してなるところ、サプリメント等のいわゆる健康食品を取り扱う業界においては、商品の原材料(素材)の持つ効果・効能(力)に着目し、それを訴求するために、『素材の力を詰めた』『素材の力を高め』のように、『素材の力』の文字が商品の宣伝・広告において広く使用されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定商品中、『サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品』に使用しても、これに接する需要者は、それが上記のごとき宣伝・広告用の文言であると認識するにとどまり、結局、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。したがって、本願商標は、その指定商品中、『サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品』に使用するときは、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、上記1のとおり、「素材の力」の文字を標準文字で表してなるものである。
 そして、当審において職権をもって調査したが、本願の指定商品を取り扱う業界において、「素材の力」の文字が、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないといえるほどに、取引上一般に商品の宣伝広告として使用されている事実を発見することができず、さらに、本願の指定商品の取引者、需要者が該文字を自他商品の識別標識とは認識しないというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、その指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが相当であり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/04/29