最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「豆腐屋さんのおから茶」は、商標法第3条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-8952、平成31年4月24日審決、審決公報第234号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「豆腐屋さんのおから茶」の文字を標準文字で表してなり、第30類「おからを原材料とするお茶」及び第43類「おからを原材料とするお茶を主とする飲料の提供」を指定商品及び指定役務として、平成29年2月1日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要点

 原査定は、「本願商標は、『豆腐屋さんのおから茶』の文字を標準文字で表してなるところ、構成中の『おから茶』の文字は、食品を扱う業界において、『おからを使用してつくられる茶』を表すものであり、また、『(お)豆腐屋さんの○○』(○○には商品名が入る。)等の表示を用いた商品が多数、販売されている実情がある。そうすると、本願商標は全体として、『豆腐屋の、おからを使用してつくられる茶』程の意味合いを認識させるにすぎないから、本願商標を、その指定商品・指定役務に使用しても、これに接する需要者は、指定商品又は指定役務の品質、特徴を表したものと認識するにとどまり、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標というのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、前記1のとおり、「豆腐屋さんのおから茶」の文字よりなるところ、その構成文字は、同書、同大、等間隔で外観上まとまりよく一体に表されているものである。 そして、本願商標は、その構成中の「おから茶」の文字が、「おからを使用してつくられる茶」を表すものであり、その構成文字全体から、「豆腐屋の、おからを使用してつくられる茶」程の意味合いを理解させるとしても、本願商標の指定商品及び指定役務との関係において、いまだ漠然とした意味合いを想起させるにとどまるというべきであって、直ちに特定の商品の品質、役務の質等を直接的、かつ、具体的に表示するものとして需要者に認識、把握されているということはできない。
 また、当審において職権をもって調査するも、「豆腐屋さんのおから茶」の文字が、本願商標の指定商品及び指定役務との関係において、取引上、ありふれて使用されているというような事情も見いだせない。
 そうすると、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品及び役務であることを認識することができない商標とはいえないものであり、自他商品・役務の識別標識としての機能を十分に果たし得るものと判断するのが相当である。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「基礎代謝PLUSα」は、商標法第3条第1項第3号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-11575、令和1年5月20日審決、審決公報第234号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「基礎代謝PLUSα」の文字を横書きしてなり、第32類「ビール,香りを付けた飲料水,ミネラルウォーター,炭酸水,エネルギー補給用の清涼飲料(医療用のものを除く。),スポーツ用の清涼飲料,浸出液を含有する飲料水,飲料製造用のシロップ・濃縮液・その他の液状・粉末状の清涼飲料製造用調製品,その他の清涼飲料,果実飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料」を指定商品として、平成29年2月7日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要点

 原査定は、「本願商標の構成中、『基礎代謝』の文字は『生命を維持するのに必要な最小のエネルギー代謝。』の意味を、『PLUSα』の文字は『(和製語plus alpha)ある状態に、さらにいくらかをつけ加えること。また、そのつけ加えたもの。』の意味を認識させる語であるから、本願商標は、全体として『基礎代謝をさらに付け加える』ほどの意味合いを理解させるものである。また、近年、美容、ダイエットの分野においては、代謝について非常に注目されており、基礎代謝を効果的に高める商品が販売されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者は、『基礎代謝をさらに付け加えてアップさせる(高める)商品』と認識するにすぎないから、本願商標は、単に商品の品質、効能(用途)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、前記1のとおり、「基礎代謝PLUSα」の文字を横書きしてなるところ、その構成中、「基礎代謝」の文字は、「生命を維持するのに必要な最小のエネルギー代謝。」の意味を有する語として一般に広く知られているものであり、また、「PLUSα」の文字は、「プラス」の英語「PLUS」と「アルファ」のギリシア語「α」とを結合してなるものと看取、理解されるものであって、その文字全体をもって、「ある状態に、さらにいくらかをつけ加えること。」の意味を有する「プラスアルファ」の語に通ずるものとして認識されるとみるのが相当である。
 そうすると、本願商標は、その構成全体から「基礎代謝にいくらかをつけ加えること」ほどの意味合いを想起させるとはいい得るものの、その意味合いをもって、本願の指定商品に係る商品の品質を直接的、かつ、具体的に表してなるものとはいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「基礎代謝PLUSα」の文字が、商品の品質を直接的、かつ、具体的に表示するものとして一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本願商標をその指定商品に使用したときに、これに接する取引者、需要者が、それを商品の品質を表示したものと認識するというべき事情も見当たらない。
 そうすると、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の品質を表示するものとして認識されることはないというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/05/06