最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「ネオバターロール」は、商標法第3条第1項第3号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-017423、令和1年9月10日審決、審決公報第238号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「ネオバターロール」の文字を標準文字で表してなり、第30類「バターロールパン,マーガリンを充填したバターロールパン」を指定商品として、平成29年4月3日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由(要点)

 原査定は、「本願商標は、『ネオバターロール』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の『ネオ』の文字は、『新』の意味を有する接頭語で、品質を誇称するため一般に使用されている『NEO』に通じ、『新しい』または『新製品』の意味を容易に認識させることから、本願商標は、全体として『新しいバターロールパン』の意味を理解させるにとどまり、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、前記1のとおり、「ネオバターロール」の文字を標準文字で表してなるものである。
 そして、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「ネオバターロール」の文字が、原審説示のように、商品の品質を表示するものとして一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本願商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の品質を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の品質を表示するものということはできない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第5号に該当する、と判断された事例
(不服2019-4493、令和1年7月17日審決、審決公報第238号)
本願商標


 
1 本願商標

 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第9類「電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,通信ネットワークを通じてダウンロード可能な電子計算機用プログラム,コンピュータネットワーク用サーバ,その他の電子応用機械器具及びその部品」及び第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成・環境設定・保守・インストール・機能の拡張・機能の変更・機能の追加その他の最適化及びこれらに関する調査・助言・コンサルティング・情報の提供,電子計算機の環境設定・インストール・機能の拡張・機能の変更・機能の追加その他の最適化及びこれらに関する調査・助言・コンサルティング・情報の提供,電子計算機用プログラムの故障診断及びウイルス検査及びこれらに関する調査・助言・コンサルティング・情報の提供,電子計算機用プログラムの複製他(一部記載を省略)」を指定商品及び指定役務として、平成29年5月19日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由

 原査定は、「本願商標は、『GA』の文字からなるところ、その文字は、やや右に傾いた書体で書されているが、それ以外に別段の特徴があるとはいえない書体であり、近年のレタリング技術の進展よりすれば、普通に用いられる域を脱しない程度の態様で表してなるにすぎないものというのが相当である。また、欧文字の2字からなる標章は、一般に商品の型式、品番及び役務の等級等を表示する記号、符号等の類型の1つとして、各種商品及び役務において普通に採択、使用されており、本願指定商品を含む分野で、『GA』のようにローマ字の2字からなる表示が、商品の規格、品番を表示する記号、符号として一般的に使用されている事実がある。そうすると、本願商標は、特殊な態様からなるものとはいうことができず、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であって、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第5号該当性
 本願商標は、別掲1のとおり、「GA」の文字をやや斜めの書体で書してなるところ、当該文字は一般に広く使用されている書体であるサンセリフ体と近似した特徴を有するものであり(別掲2)、しかも、字形を左右いずれかに傾けて文字を表す方法(斜体)は広く一般に用いられているものといえるから、全体として特殊な態様からなるものということはできない。
 また、本願の指定商品等を取り扱う業界においては、欧文字2字を商品の品番、型番、種別、形式、規格等を表示するための記号、符号として取引上普通に採択・使用されている(別掲3)。
 そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、本願商標を、商品の品番、型番、種別、形式、規格等の一類型と看取、理解するにとどまるというのが相当であり、自他商品・役務の識別標識とは認識し得ないものである。
 してみれば、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標といわざるを得ず、商標法第3条第1項第5号に該当する。

(2)請求人の主張
ア 請求人は、本願商標は「GA」の文字をサンセリフ体を基本にし、「G」の文字については曲線部分の線の太さに強弱をつけ、曲線部分と直線部分を一本の線で組み合わせており、「A」の文字についても直線をまとまりよく組み合わせており、共に右斜めに傾斜化させることで、よりシンプルで統一感を持たせたデザイン化された書体を用いており、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標ではない旨主張する。 しかしながら、本願商標は、上記(1)のとおり、一般に広く使用されている書体であるサンセリフ体と近似した特徴を有するものであって(別掲2)、その構成中の「G」の文字における曲線部分の線の太さの強弱の程度は微差にすぎず、また、その構成中の「A」の文字における直線の組み合わせはサンセリフ体における「A」の文字に係る普通の特徴といえ、しかも、字形を左右いずれかに傾けて文字を表す方法(斜体)は広く一般に用いられているものといえるから、その構成が決して特殊な態様からなるものということはできない。
イ 請求人は、ローマ字2文字でセリフ体やサンセリフ体を基本にしてデザイン化された書体での登録例が多数存在している旨主張する。
 しかしながら、商標の登録の判断は、その案件ごとにおいて個別具体的に判断されるべきものであるところ、当該登録例は、商標の具体的構成等において本願商標とは事案を異にするものであり、本願商標については、上記(1)においてした判断のとおりであるから、当該登録例をもって本願商標の商標法第3条第1項第5号該当性の判断の判断が左右されるものではない。
ウ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。

(3)まとめ
 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当し、登録することができない。
 よって、結論のとおり審決する。

※「別掲2」「別掲3」については、審決公報をご確認下さい。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/05/17