最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「Maiami」は、商標法第3条第1項第3号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-16297、令和1年9月24日審決、審決公報第239号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「Maiami」の欧文字を標準文字で表してなり、第14類、第21類及び第25類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として平成29年8月31日に登録出願されたものである。
 そして、願書記載の指定商品については、当審における平成30年12月6日付けの手続補正書にて、第25類「被服,洋服,コート,セーター類,マフラー,帽子」に補正されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要点

 本願商標は、アメリカ南東部フロリダ州の観光地「Miami」のローマ字表記「Maiami」の文字を標準文字で表してなるものであって、アメリカ南東部フロリダ州の「Miami」(マイアミ)は、観光地として我が国において広く知られていること、及び当該地名以外に「マイアミ」の称呼が生ずる一般名称が存在しないことを考慮するならば、本願商標は、「Miami」のローマ字表記「Maiami」の文字を標準文字で表してなるものと理解するのが相当であるから、これをその指定商品に使用しても、単に商品の産地・販売地を表示するにすぎないものと認める。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。


3 当審の判断

 本願商標は、「Maiami」の欧文字を標準文字で表してなるところ、これはローマ字読みすると「マイアミ」の表音が生じるものであるが、該表音が、アメリカ南東部フロリダ州の観光地である「Miami」から生じる表音と同じであるとしても、本願商標「Maiami」とアメリカ南東部フロリダ州の観光地「Miami」とは、そのつづり字が異なるものである。
 また、当審において職権を持って調査したところ、本願商標を構成する「Maiami」の文字(語)は、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語のいずれの辞書にも載録されていないものであるから、本願商標は造語と認められる。
 加えて、当審において職権をもって調査した結果、「Maiami」の文字が本願指定商品を取り扱う業界において、商品の産地、販売地を表示するものとして、取引上一般に使用されている事実は発見できず、さらに、アメリカ南東部フロリダ州の「Miami」(マイアミ)は世界的に有名な観光地であり、我が国において広く知られていること、及びその英語表記が「Miami」であることは一般的な英和辞典(例えば、「ベーシック ジーニアス英和辞典」株式会社大修館書店発行)にも掲載されていること等を考慮すれば、本願商標に接する取引者、需要者が該文字を商品の産地、販売地を表示するものと認識するとは認められない。
 また、その他に、取引者、需用者が該文字を商品の産地、販売地を表示するものと認識するというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、商品の産地、販売地を表したものと認識されるとは認め難く、本願商標は自他商品の識別標識としての機能を果たし得るというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「リッチ処方」は、商標法第3条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2019-801、令和1年9月19日審決、審決公報第239号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「リッチ処方」の文字を標準文字で表してなり、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料,つけづめ,つけまつ毛,化粧用コットン,化粧用綿棒,化粧用脱脂綿」及び第5類「薬剤,医療用試験紙,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,尿吸収用パッド,おりものシート,脱脂綿,綿棒,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,おむつ,おむつカバー,失禁用パンツ,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。)」を指定商品として、平成29年8月18日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由(要点)

 原査定は、「本願商標は、『リッチ処方』の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、本願の指定商品を取り扱う業界において、『贅沢に成分等を配合した商品』ほどの意味合いで、商品の宣伝、広告として広く一般に使用されている実情がある。そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、需要者をして、商品の宣伝、広告として理解されるにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない標章である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、前記1のとおり、「リッチ処方」の文字を標準文字で表してなるところ、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「リッチ処方」の文字が、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないといえるほどに、取引上一般に使用されている事実を発見することができず、さらに、本願の指定商品の取引者、需要者が該文字を自他商品の識別標識とは認識しないというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、その指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが相当であり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/05/17