最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「グローバル聖徳太子」は、商標法第4条第1項第7号に該当しない、と判断された事例
(不服2019-3330、令和1年11月7日審決、審決公報第240号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「グローバル聖徳太子」の文字を標準文字で表してなり、第9類「電気通信機械器具,同時通訳に使用する受信機,電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータートロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。)」他(※一部商品の記載を省略)、第41類「翻訳,通訳,通訳に供する装置の貸与,通訳・翻訳・語学に関するセミナー・講演会の企画・運営・開催」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイトの作成又は保守,コンピュータ・システムの設計・作成・保守に関する指導・助言等のコンサルティング」他(※一部役務の記載を省略)を指定商品及び指定役務として、平成29年10月17日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要点

 原査定は、「本願商標は、『グローバル聖徳太子』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中『聖徳太子』は、冠位十二階及び十七条憲法を定めるなど、我が国において著名な歴史上の人物と認められる。そして、例えば、『聖徳太子』のゆかりの地においても、聖徳太子に関連する文化財を公開するなど、『聖徳太子』の顧客吸引力にあやかった地域振興を図る施策が行われている実情がある。そうすると、一法人である出願人が、歴史上の著名な人物である『聖徳太子』に由来する『グローバル聖徳太子』の文字からなる本願商標を登録し、その指定商品・役務について独占的に使用することは、『聖徳太子』にちなんだ地域おこしや観光振興などの公益的な施策の遂行を阻害し、社会公共の利益に反するものというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、上記1のとおり、「グローバル聖徳太子」の文字からなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさをもって、等間隔に表されており、外観上まとまりよく一体のものとして把握し得るものである。
 そして、「グローバル聖徳太子」の文字は、一般的な辞書等には載録がなく、また、特定の意味合いを有する語として知られているとも認められないものであって、たとえ、その構成中の「聖徳太子」の文字が、飛鳥時代の推古天皇の摂政であり、冠位十二階や十七条憲法を制定した人物の名称として知られているとしても、かかる構成において、これに接する取引者、需要者は、構成全体で一体不可分の造語として認識するものとみるのが自然である。
 また、原審説示のように「聖徳太子」のゆかりの地とされる地域等において、観光振興や地域おこしなどの公益的な取り組みが行われているとしても、本願商標の指定商品及び指定役務は、観光振興や地域おこしに関するイベント等において利用される蓋然性の高い、地方の特産物、土産物等の商品等とは、密接な関係性を有するとはいえないものである。
 そうすると、請求人が本願商標を出願し、登録を受けることが、公益的な機関による観光振興や地域おこしのための施策等に「聖徳太子」の名称を利用することについて支障を生じさせるおそれがあるとはいい難いものである。
 さらに、当審において職権をもって調査するも、当該文字を商標として採択、使用することが、「聖徳太子」のゆかりの地とされる地域等の人々の感情を害すると認め得る具体的な事情は、発見することができなかった。
 してみれば、本願商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような構成でないことは明らかであり、また、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するとはいえず、加えて、他の法律によって、その使用が禁止されているものではなく、本願商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるというべき事情も見いだせないものであるから、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「Roundish」は、商標法第3条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2019-8393、令和1年11月6日審決、審決公報第240号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「Roundish」の文字を標準文字で表してなり、第20類「家具」を指定商品として、平成29年9月1日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由(要旨)

 本願商標は、「Roundish」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、当該文字は「丸みのある」の意味を有する語であり、その表音である「ラウンディッシュ」の語が、その指定商品と需要者を共通にする家庭用品を取り扱う業界において、丸みのある商品について使用されている実情がある。そうすると、需要者は、「Roundish」の文字から、「丸みのある商品」であると理解するというのが相当である。
 そうすると、本願商標は、その指定商品に使用されるときでも、これに接する取引者・需要者をして「丸みのある家具」と理解されるにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ず、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。


3 当審の判断

 本願商標は、「Roundish」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は「丸みのある、やや丸い。」(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)の意味を有する英語であるものの、我が国において親しまれた外来語ではないから、特定かつ具体的な意味までを容易に想起させるものではなく、商品の品質を表示する語と直ちに認識されるものではない。
 また、当審において職権をもって調査したが、「Roundish」の文字が、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、商品の品質又は形状等を示す表示として、取引上普通に使用されているという事実は発見できなかった。さらに、我が国における商慣習として、当該文字が単独で、宣伝広告などにおいて、取引上親しまれて用いられているという事実も見いだすことができなかった。
 他に、本願商標が、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものであるというべき事情は見いだせない。
 したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえず、商標法第3条第1項第6号に該当しない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/06/30