最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「PUERTA DEL SOL」は、商標法第3条第1項第3号に該当しないと判断された事例
(不服2019-7624、令和1年11月22日審決、審決公報第241号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「PUERTA DEL SOL」の文字を表してなり、第14、16、18、21、25、28類及び第34類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成30年1月23日に登録出願されたものである。
 その後、手続補正書により、その指定商品は、第14類「貴金属製キーチェーン,キーホルダー,アンクレット,ウォレットチェーン,ネクタイピン,ネックレス,ピアス,ピンバッジ,ブレスレット,ペンダント,指輪,装身用ピン,カフスボタン,その他の身飾品」他、第18類「財布,その他のかばん類,袋物」他、第25類「被服,履物」他及び第34類「たばこ,喫煙用具,ライター」他と補正された(※いずれの区分も一部指定商品の記載を省略)。


2 原査定の拒絶の理由(要旨)

 本願商標は、スペインの首都マドリッドの都心をなす広場であり、まわりに高級専門店が並ぶ「PUERTA DEL SOL」の文字を普通に用いられる方法で書してなるから、これをその指定商品に使用しても、単に商品の産地、販売地を表示するにすぎない。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。


3 当審の判断

 本願商標は、「PUERTA DEL SOL」の欧文字を表してなるところ、当該欧文字は「太陽の門」の意味を有するスペイン語(参照「現代スペイン語辞典 改訂版」白水社)であって、「スペインの首都、マドリードの中心部にある『太陽の門』を意味する広場」(参照「大辞泉 第2版」小学館)を指称する語でもある。
 しかしながら、上記スペイン語としての語義は、我が国におけるスペイン語の普及の程度を鑑みると、容易に想起できるものではなく、また、上記広場は、我が国において広く知られた地名や観光地とはいい難い。
 そして、当審において職権をもって調査したが、上記広場の名称が、その指定商品との関係において、商品の産地又は販売地を表示するものとして、取引上普通に用いられていることを示す証拠は発見できず、さらに、本願商標に接する取引者、需要者が、これを商品の産地又は販売地を表示するものと認識するというべき事情も発見できなかった。 以上によれば、本願商標は,我が国における需要者及び取引者をして、その指定商品との関係において、商品の産地又は販売地を示す語と一般に認識されるものとはいえない。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-650013、令和1年9月30日審決、審決公報第241号)

 
1 本願商標

 本願商標は、別掲(1)のとおりの構成からなり、第25類「Footwear.」を指定商品とし、2015年(平成27年)9月22日にオーストリアにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2016年(平成28年)1月14日に位置商標として国際商標登録出願されたものである。
 そして、その商標の詳細な説明については、手続補正書により補正され、その指定商品については、国際登録簿に記録された限定の通報があった結果、最終的に、第25類「Sneakers.」となったものである。


2 原査定の拒絶の理由の要点

 原査定は、「本願商標は、アルファベットの『U』を台形状に表したような比較的シンプルな構成よりなり、その位置も、各社が採用する外側側面のシューレース装着部分とミッドソールとの間に配するというありふれた手法によるものであることから、本願商標がある程度のデザイン性を有しているとしても、商標全体としてみたときには、需要者にとって本願商標は商品の機能又は美感に資するためのデザインの一部分と認識するにとどまるといえ、かつ、機能又は美感に資することを目的とした形状であると予測し得る範囲内のものであるというのが相当であるから、本願商標は、その指定商品に使用をしたとしても、商品の外観上のデザインの一部を表したものと認識するにとどまり、特定の事業者の業務に係る商品であることを表すための出所表示としては認識し得ないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、別掲のとおり、靴の甲の側面にアルファベットの「U」の欧文字を台形状に表したような図形(以下「U台形図形」という。)からなる位置商標であって、「商標の詳細な説明」として、「商標登録を受けようとする商標は、標章を付する位置が特定された位置商標であり、靴の左側面中央部に位置する図形からなる。なお、破線は商品の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。」旨の記載がなされ、第25類「Sneakers.」を指定商品とするものである。
 そして、靴の甲の側面に位置するU台形図形は、その上辺と下辺が異なる角度で右方向に末広がりとなる構成からなるものであって、単純な図形とはいい難く、その形状はありふれた図形とはいえないものである。
 また、当審において限定された本願の指定商品「Sneakers.」を取り扱う業界において、靴の甲の側面に各社多様なブランドのロゴマークの図形を付す表示態様が多く採用されている実情があり、その需要者も靴の甲の側面のロゴマークの図形を自他商品の識別標識として、商品を識別し選択することも決して少なくないというのが相当である。
 さらに、当審において職権をもって調査したが、本願の指定商品を取り扱う業界において、靴の甲の側面に位置するU台形図形が、請求人以外の者の取り扱いに係る商品の外観上のデザインの一部を表したものとして、取引上一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本願の指定商品の取引者、需要者が該図形を何人かの業務に係る商品であることを認識することができないというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、全体として、需要者が単に装飾や模様として認識するにとどまるものといえないものであり、これを位置商標として、その指定商品の「Sneakers.」に使用した場合、その商品の需要者をして、請求人を表す出所識別標識として認識し得るということができる。
 してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものといえるから、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/07/02